新型コロナウイルスの感染拡大のため、ストップしていた連続ドラマの放送が再開。過去に放送された名作ドラマの再放送ラッシュも続いており、ドラマ業界が盛り上がりを見せている。中でも、脚本家・中園ミホさんの作品が改めて関心を集めている。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが、今注目の理由について解説する。
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『やまとなでしこ』(フジテレビ系)の再放送が明らかになったとき、ネット上は大いに盛り上がりました。同作は2000年に放送された松嶋菜々子さん主演のラブコメで、最終話は世帯視聴率34.2%を叩き出した名作(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。コロナ禍による月9ドラマ『SUITS/スーツ2』の放送中断に伴い、「20周年特別編」として再編集した超解像リマスター版を6日・13日の2週×2時間で放送されるのです。
このニュースに関連づけて注目したいのは、6月17日に続編の放送がスタートした『ハケンの品格』(日本テレビ系)。スーパー派遣・大前春子がチェーンソーで扉を破壊するなどの破天荒な姿を見せて、いきなりSNSを盛り上げています。
さらに、「今年は『ドクターX』(テレビ朝日系)の続編は見送りか」などの記事が複数のメディアで報じられ、そのたびにファンたちの間で「残念」「仕方ない」などとさまざまな声が挙がっていました。
この3作は脚本家の中園ミホさんが手がけたヒット作であり、『やまとなでしこ』が2000年、『ハケンの品格』が2007年、『ドクターX』が2010年代と、各時代で支持を集めてきたことが分かります。コロナ禍に見舞われた今、なぜ中園ミホさんの作品が求められているのでしょうか。
◆共感・痛快な物語を支えるリアリティ
『やまとなでしこ』『ハケンの品格』『ドクターX』の共通点は、主人公が「仕事のできる女性」「自立した女性」であり、言動にブレや迷いがないこと。そんなたくましい主人公が社会の問題点や悪しき慣習を打ち破っていく痛快な姿が女性視聴者の共感を誘ってきました。新型コロナウイルスの脅威が続く中、中園さんのドラマは、視聴者の「せめてドラマくらいはスカッとさせてほしい」という潜在願望を満たしてくれるものなのでしょう。
ドラマで視聴者の共感を誘い、痛快な気持ちにさせるために前提として必要なのは、描写のリアリティ。過酷な労働環境、ハラスメント、差別、女性の生きづらさなど、社会の問題点や悪しき習慣の描写がリアルだからこそ視聴者は主人公の活躍に共感し、留飲を下げられるのです。
その意味で、当事者たちへの取材をリアリティあるセリフにつなげてきた中園さんの脚本は業界最高峰。リアリティを求めて派遣社員たちとのコミュニケーションを取り続けたり、客室乗務員との合コンをセッティングしたりなどのエピソードは業界内で知れ渡っています。
また、中園さん自身、当事者たちの話を聞くほど思い入れは強くなるため、必然的に生きづらさを抱える女性たちを応援するような物語になり、だからこそ視聴者は神野桜子、大前春子、大門未知子の姿がまぶしく見えるのでしょう。
そして、忘れてはいけないのは、中園さんが脚本家兼占い師でもあること。中園さんは14歳から学び続けて脚本家になる前の24歳で占い師になったほか、現在も占いサイトを運営し、占い本を手がけるなど、多くの人々から話を聞き、その人生にふれてきました。ドラマには占った人をモデルにしたキャラクターも少なくないようですし、「脚本家としての目線に占い師としての経験を加えている」という点がリアリティにつながっているのです。
◆『ドクターX』で見せた割り切り