全国で5万5000店超の店舗数となり、頭打ち感が出始めているコンビニエンスストア。コロナ禍の今後はますます真価が問われそうな情勢だが、主要コンビニチェーンの中で唯一元気がないのがファミリーマートだ。その要因はどこにあるのか。ジャーナリストの有森隆氏がレポートする。
* * *
ローソンと生活雑貨「無印良品」を展開する良品計画が提携し、6月17日から「久が原一丁目店」(大田区)、「新宿若松町店」(新宿区)、「南砂二丁目店」(江東区)の3店で無印良品の試験販売を始めた。店内には無印の専用棚を設けて肌着や化粧品、文房具などを陳列。販売期間は3か月を予定している。
「ここまでやりますか」──。店を訪れたローソンの取引先関係者は、そう驚きを隠さない。なぜなら、ローソンが1店舗で取り扱う商品アイテムは約3500点。最大500品目を無印良品に置き換えたからだ。無印の商品が並ぶ陳列スペースは売り場のおよそ15%を占め、存在感を放つ。
今後は国内約1万5000店舗でも立地や顧客動向を見極めながら無印良品を扱うかどうかを検討するという。さらに次のステップとして、店舗での売れ行きの分析を基に、プライベートブランド(PB)商品を共同開発する。新型コロナをきっかけに売り上げが増えている洗剤やレトルト食品などが候補に挙がる。PB商品だけを並べた実験的な店舗展開も視野に入れている。
SNSでは歓迎の声があがる一方で、こんな投稿があった。「無印の“元カレ”はどんな気持ちだろうね??」。
良品計画は同じ旧セゾングループだったファミリーマートに商品を供給してきたが、2019年1月に契約を終了した。ファミマ向けの商品供給額は2018年2月期に82億円あったが、良品計画は新たな販路を探しており、品揃えを拡大したいローソンと思惑が一致したという経緯がある。
ファミマと無印良品の“離婚”はファミマの親の事情によるところが大きい。ファミマは現在、伊藤忠商事の子会社。「外部に利益をやることはないだろう」との岡藤正広・伊藤忠商事会長兼CEOの意向が強まり、良品計画との関係は希薄になったといわれている。ファミマでの無印ブランドの販売終了を受け、SNSでは惜しむ声が広がった。「ファミマに行く理由がなくなった」。
ローソンの関係者はこう証言する。
「竹増貞信社長は世界で『MUJI』ブランドを確立し、根強いファンを抱える無印から学ぶことが多いと考えていた。例えば、化粧品。資生堂などナショナルブランドではなく、無印の化粧水を選ぶ女性が多いのはなぜなのか、ずっと関心を持っていた」
ローソンの親会社で、良品計画の第5位の大株主(3.8%を保有)でもある三菱商事が両社の提携を後押しした。「ローソンの新しい目玉に無印がなるような気がする」(三菱商事の関係者)