様々な体験取材でおなじみの“オバ記者“ことライター・野原広子(63才)が、気になる時事問題にゆるくツッコミを入れる! 今回のテーマは「自粛で長いこと家にいたであろう女性たちを見て思うこと」です。
* * *
これもコロナ禍のひとつかしら。県をまたいだ行き来ができるようになって2週目の週末のこと。幼友達のE子(63才)と入った銀座の老舗洋食店のカフェは、少しずつ間隔を空けてはいるものの、ほぼ満席。
「だから、それよ、それッ! ぎゃははは」「うそだぁぁぁぁ」「ほんとだってばぁぁ」
すぐ隣の座席から耳をつんざくような大声が聞こえてきたの。4人グループは見たところ私たちと同じアラカンか。いや、最近では「同年代」と見込んでも3つも4つも年下だったりするから、50代後半かもしれない。いずれにしても数分ごとに「ぐぁあああ」。絶叫とも笑いともつかない声が聞こえてくるんだわ。
見たところ、天上天下唯我独尊の大声は1人だけだけど、あまりの大音量にE子も眉をひそめ、会話どころじゃなくなった。で、何度目かの大波のとき、反射的に私の体がグイッと彼女たちに向き合っちゃった。
「…えっ、何?」と、向こうの誰かが言ったと同時に、戦闘開始。
壁の一部が鏡になっていたから、背を向けていた2人も鏡越しに私をニラんできた。すわ、4対2の女の闘い?
「やめなよ」
E子に止められて体を戻したものの、不愉快ったらない。大声の張本人は謝るどころか、その後ずっと、私をニラみっぱなし。そして、15分くらいしてようやく、「帰ろ、帰ろ」と席を立って帰って行った。
これがドリンクバーのあるファミレスならスルーするよ。でも、ドリンクとケーキのセット2000円也の気取った店だよ。マスクを外しているぶん、みんな小声で話しているというのに、その空気をぶち壊していいと思ってる? もしこれでコロナに感染したら、あぁ、もう、どうしてくれよう。
「まあ、そう言うなって。あの大声を出した眉の太い人は、日頃、人と話していないのかもよ。きっと久しぶりに家から出て、はしゃいじゃったんだよ」
なかなか怒りが収まらない私を、E子はそう言って慰めてくれた。そのときはそれで収まったけど、思えば最近、同世代の不作法が許せなくなることが多い。
しばらく前にこんなことがあった。
ある日の夕方、バスに乗ったときのこと。キチンとした着物姿の、白髪まじりの年配の女性(年の頃なら70才くらい)が乗り込んできて、最後部座席にいた私のすぐ横に座ったの。女性の着物は素人目から見ても、いい感じの着付け。植物のつるで作ったバッグも着物の柄にピッタリで、昨日今日、着物を着始めたんじゃない。着付け師か、茶道の師匠か。
と、そのときよ。つるのバッグから携帯の着信音が聞こえ、慌ててそれを取り出した。