新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛期間中に、猫のかわいい動画などでイライラや不安が癒された、という人が多かった。上野動物園の動物解説員などを務め『ざんねんないきもの事典』シリーズを監修した動物学者の今泉忠明さんと、『飛び猫』などで猫を撮り続けているカメラマンの五十嵐健太さんは、ともに「コロナ禍が猫ブームに拍車をかけた」と話す。
実際、ブリーダーやペットショップなどへの問い合わせも増えている。
以前の猫ブームは働く独身女性中心だったが、いまや男性にも猫好きが拡大。2017年にはペットの飼育頭数も猫が犬を上回った。つまり、猫ブームは20年以上にわたって、じわじわ拡大し続けている。
「そんな中、テレワークで在宅時間が増えたなどの理由で、諦めていた猫を飼うことを考える家庭が増えたのでしょう。実際、狂犬病予防注射や散歩も必要のない猫は、ペットとして飼いやすい面がある。これを機会に猫のことをもっと知ってほしいと思います」(今泉さん)
10万点以上の猫写真を撮影している五十嵐さんは、7月11・12日に東京・渋谷のギャラリー・ルデコでチャリティー猫イベントを開催(入場料を保護猫カフェや島猫の避妊代・医療費に寄付)する。
「飛ぶ猫を撮るコツは、明るい場所で、猫よりもカメラ位置を低くし、周囲の写り込みをなくし、猫のジャンプに合わせてカメラを動かし、広角で撮ること」(五十嵐さん)
◆猫がもたらす“幸せホルモン”の効用とは
去る6月27日、富山市の用水路に倒れていた高齢男性の救助に携わった猫に、感謝のキャットフードが贈られたというニュースがあったが、猫の人助けは前代未聞。猫の未知なる能力を示した一例だ。
猫の知られざる可能性を感じさせるものに、出版プロデューサーの樺木宏さんが提唱する「猫社員制度」がある。
「猫は職場にいるだけで、働き方改革を起こしてくれる存在です。実際、猫社員を導入した企業では、社内に共通の話題ができてコミュニケーションが円滑に。対外的な企業イメージもアップしました」(樺木さん)
そのほかのメリットでは、猫をなでると人間の脳内に愛情ホルモンのオキシトシンが分泌され、ストレスを解消してくれる効果も期待できる。
「さらに猫をなでると幸せホルモンのセロトニンも出て、怒りや快楽のホルモンに作用し、心が整います。つまり、猫をなでればなでるほど、癒しのループが生まれ、企業の生産性も向上するのです。また、ペットにフレンドリーな会社は多様性や会社への忠誠心も高まるという調査結果も出ています」(樺木さん)
米国のGoogle社は、ペット同伴出社が可能で“ドッグカンパニー”を標榜しているが、日本で猫社員制度が広まれば、殺処分対策にも効果的。猫が社会で活躍する余地は、まだまだある。
※女性セブン2020年7月23日号