「本番直前に、静かに瞼を閉じるんです。しばらくして彼が目をゆっくり開くと、そこにいるのは別人なんです。凄まじい集中力でした…」(映画会社関係者)
新型コロナの影響で、映画『キネマの神様』の撮影は超厳戒態勢で進んでいる。通常より距離を取ったスタッフの中心にいるのは、沢田研二(72才)だ。彼の険しい表情がはりつめた現場の緊張感をいっそう高めていく。その様子は、「真剣勝負」という言葉がふさわしい。
『キネマの神様』は、松竹映画100周年記念作品。人気作家・原田マハの小説を原作とし、山田洋次監督(88才)がメガホンを取る。主演には、志村けんさん(享年70)と菅田将暉(27才)が起用され、志村さんにとっては、初の映画主演作になるはずだった。
主人公は、ギャンブルにのめり込み、妻や娘に心配をかけてばかりのどうしようもない父親で、彼にとってギャンブルと同じくらい愛を注いでいるのが映画だ。ストーリーは、その男性の過去パートと現在パートが織りなされる形で進んでいく。
「3月中旬には現在パートの撮影が終了し、3月下旬から志村さんが演じる過去パートの撮影が始まる予定でした。ところが初日に志村さんが撮影を突然キャンセル。現場は騒然としました。ただ、もっと驚いたのはその1週間後。まさか、新型コロナで亡くなってしまうなんて…。山田監督もショックのあまりしばらく何も手につかない様子でした」(前出・映画会社関係者)
不意に訪れた主役の降板は、作品をお蔵入りにしかねないほどの衝撃だったという。しばらくして白羽の矢が立ったのが、沢田だった。
「沢田さんは所属事務所には事後報告で、山田監督から打診を受けてすぐに快諾をしたそうです。沢田さんと志村さんは20代の頃からの盟友で、テレビや舞台での共演は数知れず。1年半もの間、ラジオの冠番組を一緒に担当したこともあるほど、互いに認め合っていた存在でした。
さらにこの映画のプロデューサーは、沢田さんのマネジャーを長年務めていた男性の娘婿。沢田さんは彼らの結婚式で乾杯の挨拶をしているんです。それだけの縁があれば、断る理由が見つからなかったのでしょう。山田監督も沢田さんの心意気に応えて、脚本を一部書き換えるなど、すぐに撮影再開に向けて動き始めました」(別の映画会社関係者)