安倍政治の終わりと新しい時代が近づいている。多くの国民がそれを強く感じるきっかけになったのは、新型コロナの自粛下の5月に起きた「ツイッターデモ」だったのではないだろうか。
〈#検察庁法改正案に抗議します〉
1人の女性会社員が5月8日に発信したとされるツイートを小泉今日子、大久保佳代子、きゃりーぱみゅぱみゅをはじめ、かつてないほど多くの俳優やミュージシャン、芸能人がリツイートしたことで国民の間に一気に拡散し、短期間に900万リツイートを超える社会現象となった。
俳優の井浦新は「もうこれ以上、保身のために都合良く法律も政治もねじ曲げないで下さい」、演出家の宮本亞門が「このコロナ禍の混乱の中、集中すべきは人の命。どうみても民主主義とはかけ離れた法案を強引に決めることは、日本にとって悲劇です」と次々に声を上げ、最終的に法案を廃案に追い込んだ。
検察庁法改正案という一般の国民にはなじみが薄く、庶民の生活には一見関係がなさそうに思える法改正に、日本中で批判が高まったのは異例といえる。この現象を起こしたのは、間違いなくコロナによる社会の変化、国民の意識の変化だ。
折しも、ツイッターデモが起きたのは、安倍首相が国民に「1か月間のがまん」を要請した、5月6日までの緊急事態宣言が延長され、長引く自粛で多くの人々が職を失ったり、休業や自宅待機に追い込まれ、生活に不安を募らせていた時期だ。特に音楽、芸能、興行といったエンターテインメント業界はイベント自粛の影響が深刻だった。芸能人も市井の人々も同じ不安を抱え、これまで以上に政府がどんな政策を打ち出し、どう対応するかに関心を寄せ、政治感覚を研ぎ澄ませていた。
国民の政治への関心が高まると、政治家のごまかしは通用しない。圧力にも負けなくなる。