一向に減らない、新型コロナウイルスの感染者数。東京都では7月上旬、連日100人以上の感染者が出ていた。9日には1日あたり過去最多となる224人の感染が発表された。本来なら人の移動が激増する夏休みまでに、新たな一手を打たなければならない。
そこでネックになっているのが、8月にスタートする予定の国土交通省などによる「Go Toキャンペーン事業」だ。
これは、コロナでダメージを受けた観光業や飲食業、イベント・エンターテインメント業などを支援する一大キャンペーン。総額1兆6794億円を注ぎ込み、旅行代や飲食代、イベントのチケット代などを消費者に還元することで、各業界の需要喚起を図る。
官邸関係者が声をひそめて打ち明ける。
「このキャンペーンはコロナの感染が拡大している時点で、壊滅的な影響が予想された観光業を救うため、観光業界と関係が深い与党幹部と官邸中枢が、肝いりで推進しているものです。
当初、『夏までには落ち着くだろう』という安易な考えで1兆円を超える予算をつけたものの、現時点で感染の再拡大がとどまらず、官邸サイドは焦っています。それでも本音では、『せっかく巨額の予算をつけたので、夏休みは旅行をしてもらいたい』と思っているはずです」
都をはじめとする自治体にも思惑がある。
「いまはどこの自治体も財政が厳しく、自前のコロナ対策をやりたくてもやれない状況です。唯一潤沢な予算のあった東京もこれまでのコロナ対策で貯金を大幅に取り崩したうえ、今後は大幅な税収減が見込まれます。その状況で各知事が『早く緊急事態宣言を出してくれ』と騒いでGo Toキャンペーンをつぶすと、官邸がヘソを曲げ、前回のように10万円の給付金などが出なくなり、打つ手がなくなる。だから小池百合子都知事以下、自治体の長は国の動きを静観しています」(前出・官邸関係者)
国と自治体の綱引きが繰り広げられるなか、官邸が恐れるのは「パフォーマンス小池」の登場だ。ある政権幹部が指摘する。