新型コロナウイルス感染者を追跡するシンガポールのスマートフォン用アプリ(AFP=時事)

新型コロナウイルス感染者を追跡するシンガポールのスマートフォン用アプリ(AFP=時事)

 COCOAはGoogleとAppleが新型コロナウイルスの感染防止のために開発したAPI(※アプリ相互のやりとりに必要な接続仕様)を用いているが、GoogleもAppleも個人情報を把握できない仕組みになっている。そして、COCOAが関知した接触履歴などの情報は政府を含めどこにも送信されず、自分のスマホの中のみに暗号化して記録される。つまり、COCOAによって得られる情報を知ることができるのは、基本的に自分のみなのだ。

 また利用する際も、氏名・電話番号・メールアドレスなどの個人情報登録の必要もなく、GPS情報を利用したり収集することもない。どこにいるかという位置の情報を記録せず、他のスマホが発しているCOCOA情報との接触だけをスマホに記録しているだけなのだ。つまり、そもそも個人情報が漏れるとか、自分のスマホの外のどこかにCOCOAの履歴が記録されるということも一切ない。

 さらに、端末内の記録も14日間を過ぎると自動的に無効となる。その上、アプリを削除すれば記録も完全に削除できるようになっている。

 たとえ感染者との接触が通知されても、前述のように位置情報を記録せず別のCOCOAインストール済みスマホとの接触履歴しかないので、具体的にいつどこで誰と接触したのかお互いにわからない。だから相手との関係性などがどこかに記録、保存されることもないので、プライバシーは守られる。

 つまり、個人情報やプライバシーという観点からすれば、一切問題はないと考えていいのだ。

「位置情報を利用しないはずなのに、設定で位置情報をオンにすることを求められた」という声も聞く。これは、AndroidはOSの仕様上、Bluetooth機能を有効にするために位置情報をONにする必要があるためである。あくまでBluetooth機能を有効にするために必要な設定というだけであり、位置情報は一切使用していないので安心してほしい。

◆自分の保険、大切な人を守る2つの意義

 アプリのダウンロードは、正直心理的、或いは物理的敷居が高いという人も多いだろう。しかし、COCOAにはインストールするだけの大きなメリットがある。それは、自分自身に対する保険と、家族や大切な人を守るという意味の2つがある。

 これまで、自分の感染が疑われても、なかなか保健所などがPCR検査をしてくれないという話は多くの人が聞いたことがあるはずだ。しかし、COCOAで感染者との接触通知がきた場合はスムーズに受診できるようになる。受診が遅れて治療が遅れ、病状が悪化したという話もあった。少しでも早い治療に結びつけるためにも、万一に備えて、保険として入れておくと安心なのではないか。

 また、若い人などは感染しても熱も出ず無症状のことが多いと言われている。そのため、知らない間にウイルスをうつされ、無自覚に拡散してしまう恐れがある。だが、このアプリを使っておくことで、自らの感染に気づかず周囲の家族や友人などにうつしてしまうリスクが軽減できるのだ。大切な人を守るために入れておくことも重要なのではないだろうか。

 実は、COCOAには課題が山積みだ。リリース当初、アプリストアで「COCOA」などで検索しても表示されなかったこと。iOSの場合iOS13.5以降が対象となるため、iPhone6やiPhone5利用者では使えないこと。そもそもスマホ利用者限定のため、スマホを所有していない人は対象外となることなどだ。

 またCOCOAでは、感染した陽性者は自ら管理システムから発行された処理番号を入力する必要がある。これは感染していないのに陽性だと報告するいたずらを防ぐ目的でもあったのだが、発行されていない文字列を入力しても「完了しました」と表示される不具合などもあった。これらの不具合は修正され、7月頭には本格運用が始まっている。

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