惜しくも三冠王を逃した選手たち

 2012年には巨人の阿部慎之助が打率と打点のタイトルを獲得したが、本塁打でヤクルトのバレンティン(現在はソフトバンク)の後塵を拝した。バレンティンは2011から3年連続本塁打王に輝いている。

 1953年に本塁打、打点の二冠王に輝くも、打率が4厘届かず。その後も3度、二冠に輝くが三冠には届かなかった中西太氏(87)は、三冠王を狙える良いバッターには今も昔も変わらぬ特長があると指摘する。

「昔よりボールもバットも数段良くなった代わりに、凄い球を投げるピッチャーが増え、スコアラーによって選手は丸裸にされ、打者のライバルも多くなりました。そんな中で求められるのは体全体を使ったしなやかなスイングで、逆方向にホームランを打てる能力。その技術を身につければ自ずと打率も上がってくる。そういうバッターでなければ、三冠王は狙えない」

 現役バッターで中西氏が、特に期待する選手はやはり岡本だという。

「岡本は成長しました。遠くに飛ばすのは力ではなく、体全体でボールを捕らえて捻ることだと理解し、ライト方向に打球が飛ぶようになった。2年連続で30本塁打を打ち、2018年には100打点、3割をマークした。どこを攻められても対処できる、踏ん張れる穴のない打撃を心がければ、さらに良い結果を残せるはずです」

 技術的には申し分ない。ただ門田氏はこう注文をつける。

「岡本で気になるのは太り気味に見えるところ。開幕時は元気でも、体重がありすぎるとシーズン半ばに疲れが出てキレがなくなり、体の回転で打てなくなるからです。体調管理をしっかりして、最初に30本打った2年前の体に戻せば、三冠を十分に狙えます」

 コロナにより異例のペナントとなった今季は、巨人の若き大砲・岡本が令和初の伝説を作るかもしれない。

※週刊ポスト2020年7月24日号

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