新型コロナウイルスの感染リスクが高い場所としてすっかり「夜の街」という言葉はすっかりおなじみになった。3月30日に小池百合子都知事会見に同席した厚生労働省クラスター対策班メンバーが使用して以降、都知事や各自治体の首長が繰り返し使っているが、もともとは「夜間から早朝にかけての接伴飲食業の場」という限定した状態を指す言葉だという注釈つきで使われていたのが、広まるにつれ「夜の繁華街で仕事をする人たち全般」を指すようになってきた。俳人で著作家の日野百草氏が、今回は、夜の歌舞伎町でパチンコ清掃の仕事をしている40代男性についてリポートする。
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「え! 夜の街関連って、私も入るんですか?」
新型コロナウイルスの感染経路として小池百合子東京都知事が好んで使い、名指しされ続ける「夜の街」、その筆頭格の新宿で働くさまざまな「夜の街」の人に声を掛けては話を聞いてきたが、終電間際に声をかけた暮沼健一さん(40代・仮名)の仕事は意外なものだった。
「パチンコ店の清掃です。もちろん本業はありますよ」
暮沼さんは上下スウェットにナイロンリュックと極めてラフ、近所の人かと思ったら通いで働いている人だった。暮沼さんは小田急線ということで小雨の中、しばし新宿駅までお話を伺う。
「パチンコ店の清掃って人気あるんです。サクッとできるし大手は時給も高い。新宿はとくに高い」
都市部のパチンコ店の大半は清掃を外部業者や自店で直接雇用するアルバイトに委託している。暮沼さんもその一人で、週の大半、夜のパチンコ店で清掃をしているという。
「パチンコ店のコロナ対策って凄いですよ、そこまでやるかってくらい完璧です。バイトなんで掃除業界に詳しいわけじゃないけど、あれだけやってるとこはないんじゃないかな」
開店中はもちろん、閉店後はとくに念入りな清掃を徹底するため息もつかせぬスピードと丁寧さが要求されるという。
「忙しいほうが時間が短く感じていいです。仕事も慣れれば難しいことはありません」
時給を聞いて、なるほど人気のはずだと思った。私も閉店後の2時間程度ならやってみたい。実際閉店後清掃のみという清掃員もいるそうだ。
「本業持ってるのが大半でしょうね。主婦や学生はもちろん、サラリーマンの副業組もいます」