新型コロナウイルスによる巣ごもり需要を背景に、日本で大ヒットした韓国ドラマ『愛の不時着』と『梨泰院クラス』。これらの韓国ドラマが今、アジアを超えて欧米でも人気を集めている。世界的ブームを巻き起こしたのは、米動画配信サービスのNetflixだ。ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんが解説する。
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『愛の不時着』に続き『梨泰院クラス』と、かつての“冬ソナ”ブームを上回る日本での人気ぶりは、韓国でも連日報じられている。黒柳徹子やSexy Zoneの菊池風磨、お笑い芸人や野球選手など、老若男女多くの著名人がSNSやYouTubeでそのハマりっぷりを投稿したことでさらに視聴者が増え、配信開始から数か月経った今も、Netflixの視聴ランキング(「今日の総合TOP10(日本)」2020年7月13日時点)では『愛の不時着』が2位、『梨泰院クラス』は3位と依然上位をキープしている。
日本だけでなく、東南アジアや欧米での注目度も高い。CNNインドネシアや英国のBBC、ガーディアン、米国のワシントンポスト、TIME誌まで、多くの海外有力メディアが韓国ドラマの人気ぶりを報じ、アジアはもちろん米国でも韓国ドラマはTVショーカテゴリーでトップ10(米Netflixのランキング)に入るほどになった。
どちらのドラマも、当初韓国では、地上波ではなく「tvN」や「JTBC」といった有料ケーブルテレビで放送された。韓国では、全世帯の9割以上がケーブルテレビやインターネットテレビに加入しており、視聴率は地上波より高い時もある。『愛の不時着』の最高視聴率は21.7%と、有料放送ドラマとしては歴代3位の視聴率を記録した。この強いコンテンツ力にいち早く目を付けたのがNetflixだ。視聴率の高いコンテンツの海外配信権を独占し、全世界に抱える約1億8000万人のユーザーに向けてコンテンツを配信。世界各地で韓国ドラマブームを巻き起こしたのだ。