新型コロナによる緊急事態宣言が解除になり、小中高の学生は通学を再開できているが、都内の大学の多くはオンライン授業を続けている。地方大学は通学が始まっているところもあるが、都内では9月までは対面授業を再開しない方針のところが多い。大学生の子どもが2人いる作家の内藤みか氏が自宅での様子をリポートした。
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午前中から、双方の子ども部屋から講義の音声が聞こえてくる。美大1年生の娘は授業のコマ数も多く、平日は朝9時頃から夕方5時頃までiPadの画面に貼り付いている。語学授業の時は先生に合わせて発声し、社会学の授業では画面に映し出された資料に見入り、一所懸命学んでいる。何時間もPCを見るのでかなり目が疲れるようだ。どんどん充電が減るのでモバイルバッテリーも必須である。
親のほうもなかなか大変だ。授業中は音を出せないので、掃除機をかけることができない。そしてランチタイムは“おうち学食”を用意しなくてはならない。自分ひとりだったら適当に済ませられるけれど、子どももいるのでパスタや肉野菜炒めなどを作り提供する。そして入学したばかりでレポートの書きかたもわからない娘にアドバイスをしたり、自宅の本棚から使えそうな資料を探す手伝いもしている。
◆友達はまだひとりもいない
娘はこの春に大学に進学した。一浪してやっと合格した憧れの美術大学である。サークルにも入るつもり満々だったし、同じ学科の友達と作品を見せ合ったり先輩の作品から学んだりもしたい──と夢いっぱいだった。けれど、まだ一度も教室に入ったことはない。コロナ禍で大学が閉鎖され、オンライン授業となったからだ。サークルにも入れず、まだ大学でひとりも友達を作れていない。新一年生は孤独を抱えたまま、授業を受け続けている。
息子は国立大学の学生だけれど、こちらもサークル活動はできない状況にあり、新歓もオンラインで行われたという。例年10人以上入部する人気サークルなのに、新歓では雰囲気をうまく伝えることができず、今年はまだ誰も入部者がいないそうだ。
子どもたちは最初のうちは焦り、1日も早く通学したい、友達に会いたいと言っていた。けれど今はすっかり慣れ、「もうこのままでもいいかも……」などと口走るようになってしまった。