ベストセラー『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『上級国民/下級国民』(小学館新書)などの著者である作家の橘玲氏が、科学的根拠をもとに男女のタブーに斬り込む最新刊『女と男 なぜわかりあえないのか』(文春新書)が話題となっている。なぜいま「男女の違い」を論じる書を手掛けたのか。橘氏に聞いた。
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恋愛やセックスはいつの時代でもひとびとの最大の関心事ですが、小説や映画、マンガなどで情緒的に語られるばかりで、アカデミズムの世界ではずっとタブーとされてきました。それが21世紀に入って、海外では女性研究者を中心に野心的な研究が続々と出てきました。
日本では不思議なことに、こうした研究はこれまでまったくといっていいほど紹介されてきませんでした。それを残念に思っていたので、週刊誌で連載する機会をいただいたときに、誰でも楽しめる性愛の研究をまとめてみたらどうだろうと思ったのがきっかけです。
(個人的に印象的だった研究を問われて)いちばんの衝撃は、「10人の父親のうち1人は他人の子どもを知らずに育てている」というデータですね。「そんなわけないだろう」と思ったんですが、過去の複数のDNA検査の結果を総覧してみると確かにそうなっている。そのなかに日本の研究がないのが救いですが、「日本だけ特別」なんてことはおそらくないでしょう。
「男はいくつになっても若い女が好き」「35歳を過ぎた女は結婚がむずかしくなる」というのは、みんな漠然と「そうだろうな」と思っていたでしょうが、たんなる経験則ではなく、北米で年間1000万人が利用する婚活サイトのビッグデータを解析した結果として示されました。これは街頭アンケートの類とは違って、男性会員がどんな女性に誘いのメールを送ったかに基づいているので、きわめて頑健な「根拠のある主張」です。
カナダの女性神経心理学者による「女は身体的な興奮と主観的な興奮が一致しない」という実験結果もびっくりしました。男はペニスの勃起と性的興奮が完全に一致しますが(興奮にしないと勃たない)、女はヴァギナが興奮しても主観的には性的興奮を感じていないことがある。これは男にとって驚天動地の話ですが、知り合いの複数の女性から「そんなの当たり前だと思っていた」「橘さんが驚いたことに驚いた」といわれて、さらにびっくりすることになりました。