どうもB紙は「不気味だ」が好みのようで、ある日の36R中、計8頭も不気味馬が出てきた。結果は1着が1頭、たいしたものである。だが、あとの7頭は馬券に絡まず、4着1頭、5着2頭だった。勝った馬の他紙評価は「末脚鋭い」など。不気味勝率12.5%。軽視禁物、侮れない。
ある重賞、無印の馬には「厳しそう」とするC紙と「大駆けも」とするD紙と。それが3着に食い込んだのだ。1、2着は人気どころだから、大駆けで3連複万馬券。妙に痛快だが、馬券を取っていればもっと欣快だった。
ところが、これが人気馬の場合は、どうも表現が似通うように思えるのだ。
人気馬を貶すことは少ない印象。先の安田記念、圧倒的人気馬の戦前評価は芳しさ鈴なりだった。しかし友人は「中20日ってのは、この馬にしては厳しい。前走とは相手が違う」と言っていた。「私がそう思うくらいだから、記者たちも同じことを感じたはず」と。だが「ローテ厳しく」などという不安の仄めかしはほぼなかった。
そこで、オッズ1倍台2倍台の人気馬への論調に注目してみた。(以下次号)
●すどう・やすたか:1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年7月24日号