藤井聡太七段(17)が16日の棋聖戦第4局で渡辺明三冠(36)を下し、史上最年少(17歳11か月)でのタイトル獲得を果たした。これまでの最年少記録は屋敷伸之九段の「18歳6か月」だった。現在、挑戦中の王位戦をはじめ、これからの藤井新棋聖の対局を観る上では、「新時代の観戦スタイル」を知っているとより楽しみが増す。将棋ライター・松本博文氏がレポートする。
* * *
将棋界始まって以来の天才とも言われる藤井聡太七段の快進撃に注目が集まっている。藤井七段が対局の際にどんな羽織袴を着てくるのか。どんな食事やおやつを食べるのか。そうしたことも観戦のポイントだ。それとともに、将棋に詳しくない方もこれを機に、将棋盤の上でどのような戦いがおこなわれているのか、少しのぞいてみてはいかがだろうか。
もちろんプロ同士の対戦の内容は、高度なもの。「解説」なくしては何がなんだかわからない。その解説のスタイルも、現在は進化している。
誰にでも見える大きな盤と駒を用意して、棋力の高い人間がそのかたわらに立ち「優勢」とか「少し不利」などの専門用語を使って局面の説明をする。これが将棋界の伝統的な解説のスタイルだ。広い場所に多くの人を集める「大盤解説会」は将棋界におけるポピュラーなイベントの一つだ。
日曜午前、Eテレで放映される「NHK杯」の解説もそうした伝統的な形式が続いている。
1988年度のNHK杯は平成の時代を席巻することになる若きヒーロー羽生善治(当時18歳、五段)が名人位経験者4人を連破して優勝した。中でも伝説となったのは準々決勝の加藤一二三九段戦。羽生は歴史に残る妙手「▲5二銀」を指した。その時、解説の米長邦雄九段は「おおー、やった!」と叫んでいる。当時の超一流・米長九段は羽生五段の指した妙手の意味を一瞬で見抜き、その叫びとなったわけである。羽生の名手は米長の叫びという一種の名解説とともに歴史に残った。