本来、夫婦間の問題であるはずなのに、「不倫は許せない」と多くのひとびと(特に女性)が声高に非難するのは、現代社会が「一夫一妻」を前提に成り立っているからだろう。だが、新著『女と男 なぜわかりあえないのか』(文春新書)で男女の性愛のタブーに斬り込んだ作家の橘玲氏は、「実は“一夫多妻”こそ女性に有利なのではないか」と疑問を投げかける。その真意について橘氏が解説する。
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伝統的社会のほとんどは「ゆるやかな一夫多妻」で、厳格な「一夫一妻」は近代以降の西欧社会で生まれたきわめて特殊な婚姻制度です。それ以前に一夫一妻のように見えたのは、貧しくて1人の妻しか養えなかっただけで、経済的な余裕ができると男はすぐに複数の“妻”を持つようになり、洋の東西を問わず権力者は巨大なハーレムをつくりました。
子どもを産み育てる女にとってみれば、特定のパートナーがいつもいっしょにいてくれる「一夫一妻」が有利に思えますが、そう単純な話でもありません。
10人ずつの男女がいて、男には「経済格差」があるとします。「一夫一妻」であれば、資産の多い少ないにかかわらず、すべての男が妻を獲得できます。
では次に、同じ10人の男女を「一夫多妻」の自由恋愛でマッチングさせてみましょう。そうなると、もっとも大きな資源をもつ男が4人の女、その次が3人の女、といった具合に、上位の男が複数の女を独占していきます。その結果、下位6人の男は性愛を手に入れることができなくなってしまうのです。
このことから、「一夫一妻」が資源のない(非モテの)男に有利な制度であることがわかります。女にとってはどうかというと、一夫一妻ではなんの資源もない男と結婚しなければならなかった女が、より大きな資源のある男を獲得できるのですから、一夫多妻は「全体的には」女にとって有利な制度ということになります。