日本最大の暴力団の分裂劇から5年、「3つの山口組」が並び立つ構図が崩れようとしている。泥沼化する抗争はヤクザ社会、そして一般社会にどんな影響をもたらすのか。暴力団取材のツートップ、溝口敦氏(ノンフィクション作家)と鈴木智彦氏(フリーライター)が語り合った。
秘蔵っ子が反逆
鈴木:六代目山口組から神戸山口組が分裂して5年が経とうとしていますが、神戸山口組の中核団体である山健組が離脱するのではないかと大騒ぎになっている。神戸側から正式な処分が出るまでは確定とは言えませんが、共同通信さえ「神戸山口組で山健組が脱退の動き 中核組織が抜け、分裂か」(7月10日付)と報じている以上、仮に今回は元の鞘に収まっても深刻な亀裂は隠しきれません。
溝口:山健組の中田浩司組長は昨年12月、六代目山口組の中核団体である弘道会傘下組員を襲撃した殺人未遂容疑で兵庫県警に逮捕され、勾留中ですが、その中田組長が弁護士を通じて神戸山口組の井上邦雄組長に対し「上納金が高すぎる。このままではやっていけない。神戸山口組を脱退せざるを得ない」と通達したそうです。このままなら山健組は独立すると。
鈴木:神戸山口組は六代目の上納金が高すぎると出て行ったはずなのに、神戸側でも同じ問題が起きてしまったんですね。
溝口:神戸山口組全体としては上納金の額を下げたんですが、井上組長は自らの出身母体である山健組だけは、自分の組だからいいだろうと下げなかった。井上組長が他団体との交際や関係者の面倒を見る資金が必要だからです。山健組を腹心の中田組長に譲ったのに、お金を含めた実権は譲ろうとしなかったことで、両者の確執が生まれた。