コロナとの戦いは世界共通でも、その開発現場では国家同士の激しい戦いや情報戦が繰り広げられている。幅広いメディアで経験豊富なジャーナリストであり、中東、ヨーロッパ、ロシアなどにわたる国際情勢に詳しいMichael Curtis氏がリポートする。
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2020年7月17日、クレムリン当局は声明を発表した。
「誰がイギリスの製薬会社や研究機関をハッキングしたかについては情報がない。ロシアは全く関係ない」
しかし、各国の当局は以前から「ロシアのスパイ」に注意を向けており、イギリス国家サイバーセキュリティセンターはその前日の声明で、ロシアの諜報機関の一部として活動しているクレムリン関連グループが、コロナワクチンの開発と試験に関する研究を盗もうとしていると述べていた。
現在のロシアの諜報活動はワクチン開発に集中しているかもしれないが、近年、イギリスやその他の国々では多岐にわたる活動が取り沙汰されてきた。2017年の総選挙の日にイギリスのエネルギー網を混乱させようとし、2019年の選挙期間中には情報リークを画策、国民健康保険サービスが売却されるという虚偽の情報が選挙戦でも言及されて混乱を招いたことなどもロシアの関与が指摘されている。他の国でも、アメリカの大統領選挙、フランス総選挙、ノルウェー政局、世界反ドーピング機関など国際機関の活動などがロシアの諜報機関から標的にされたとされる。
ロシアのスパイは偽情報を拡散させる技術に長けているとされる。一部の軍事情報機関が虚偽の記事を特にソーシャルネットワークに流してからFacebook上で増幅し、当事者間の紛争を誘発し、広範な中傷キャンペーンを展開するといった手口である。ロシアの関与が疑われた偽情報の内容が仮に「事実」だとすれば、ドイツのメルケル首相はアルコール依存症であり、アメリカはアゼルバイジャンで暴動を起こそうとしていたし、アメリカはコロナ以外にも様々な病気を引き起こした責任があり、ビル・クリントンはサウジアラビアに仕送りをしていたうえ、フランスのマクロン大統領はヨーロッパへの移民を歓迎し、イギリスの反ブレグジット運動の指導者たちはジョンソン首相の暗殺を計画していた――ことになる。