新型コロナによる経済的な影響は多くの業種を直撃しているが、とりわけ厳しい状況に追い込まれているのが旅行業界だ。業界最大手のJTBに勤務する都内在住の20代男性社員が終わりの見えない現状への不安をこう明かす。
「コロナが蔓延した4~5月は一度も出社しませんでした。6月に緊急事態宣言が明けてからは出社もしていますが、昨年に比べると仕事そのものが少ないので若手社員の間では将来に対する不安の声が出ています」
社員の生活を支える「給料」に関しても先日、会社から無情な通達があった。
「ありがたいことに夏のボーナスは前年並で貰えましたが、今冬のボーナスは支給しないというお達しがありました。覚悟はしていましたが、モチベーションは下がりますね。今年はどこも厳しいから仕方がないですが、社内では『来夏のボーナスもゼロなのでは?』と言い出す人もいて、瀬戸際に来ているなと感じます」
そうした厳しい状況を打破すべく、政府が発表した肝いり観光支援事業「GoToトラベル」キャンペーン。すでに迷走している施策だが、JTB社員はどのように受け止めていたのか。
「そりゃもちろん、社内は盛り上がりましたよ。海外旅行が現実的に難しい中で、国内旅行の需要を回復させる切り札になると期待していました。ですが首都圏の法人営業部では、当初から『GoToありきの提案は慎重に』と指示されていました。世論の影響を受ける政府の補助施策に頼り切りだとリスクが大きいからです。案の定、東京が開始直前で除外されてしまったので、準備していたかなりの数のプランが飛んでしまいました」
しかし、若手社員にとって本当に怖いのは目先の「GoTo」キャンペーンが頓挫することではないという。その目は既に来年を見据えていた。