新型コロナウイルスをめぐる状況は落ち着いているのかいないのか。毎日、その日の新規感染者数が発表されるたびに、不安な気持ちをかき立てられる人も少なくないのではないか。コロナをめぐる疑心暗鬼が、差別や偏見、パワハラを助長させる例が後を絶たない。必要以上に怖れることで地域ぐるみのパニックが学校や会社で起きている実態について、ライターの宮添優氏がレポートする。
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新型コロナウイルスの感染者が、東京などの大都市を中心に再び増加している。そういった都市部では、実際に感染者が出た学校や会社ではパニックが発生し、人間関係が崩壊するようなトラブルも相次いでいる。
「隣の校区の小学校で感染した児童が出た、と噂が立ちました。最初は怖いね、で済んでいたのですが、のちに感染児童の兄が、私の子供と同じ中学のクラスメイトだと判明して大騒ぎに。噂は、学校はおろか隣の学区にまで拡がってしまい、商店街では私の学区の住人は来るな、と言われているほどです」
南関東某市の会社員・富永直輝さん(仮名・40代)は、自身の子供のクラスメイトに、感染者との「濃厚接触者」がいることが判明した。
徐々に聞こえてきた事情によれば、濃厚接触者だった感染者の兄やその家族に、結局、感染は確認されなかったという。ところが、富永さんの息子をはじめ、学校中、そして地域全体がパニックに陥ったと話す。
「小学校は数日間の学級閉鎖に入ったそうなのですが、親たちからは『全員を検査しろ』との声が相次ぎ、もう学校に行かせない、転校させたいとの申し出まであったそうです。うちの子供のクラスでも、感染者の兄がいるということで学校に行きたがらない子や、子供を学校に行かせないという親が出て大変でした」(富永さん)
このクラスメイトは、家族のコロナ感染が発覚した際、教師にこっそり耳打ちされ、泣きながら早退したという。そんな様子を見ていた同級生たちも状況を察し、ここから噂が拡がった。
「彼は感染していないし、潜伏期間かもしれないと様子を見る時期も過ぎています。だから、本当はもう学校に来ていいはずなんですが、行きにくいようで休んでいる。あまりにかわいそうだとは思いますが、私の子供は不安がっている。どうすればいいのか…」(富永さん)
神奈川県内の自動車販売会社勤務・森田悟さん(仮名・30代)も、つい先日、同僚の感染が発覚。社内がパニックに陥っていると訴える。