録画視聴や見逃し配信が一般化した今日、この出足は番宣がうまく行った、というレベルで達成されるようなものではないはずだ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。
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いよいよドラマ『半沢直樹』(TBS系日曜午後9時)がスタートしました。池井戸潤氏の原作、7年ぶりの続編ということで、視聴者の期待が大爆発。第一話の平均視聴率は22.0%という凄い数字になりました。
今回の半沢直樹(堺雅人)はバンカーでなく、東京中央銀行の子会社・東京セントラル証券へ出向を命じられ営業企画部部長に。そこへ大手IT企業・電脳雑伎集団から大型買収アドバイザー依頼が舞い込んだ。しかし、大和田常務(香川照之)の忠実な部下、伊佐山(市川猿之助)は半沢を敵視しことごとく行く手を阻む。だが半沢も黙ってはいない。いかなる反転攻勢を遂げるのか……。
待ってました! 「やられたらやり返す。倍返しだ!」の決めゼリフ、何度聞いても爽快で視聴者をシビれさせてくれます。
今回は大和田常務役・香川さんに加えて歌舞伎界から伊佐山役の市川猿之助さん、そして瀬名役・尾上松也さんも参戦です。
悪辣な代官さながら、ふんぞり返る伊佐山の鼻を如何にしてあかしてみせるのか。みんな固唾を飲んで待ちうける。大手金融機関内での抗争劇で正義の味方「半沢直樹」が最後に勝つという、いわば勧善懲悪劇ですから、ドラマの構造は前作と共通しています。
しかしやっぱり見てしまう。画面に惹き付けられてしまうのはなぜなのか? いったいドラマを通して私たちは何を楽しんでいるのでしょうか。何を味わっているのでしょう?
今回の『半沢直樹』をじいっと見つめると、あらためて堺雅人という役者のパワーと独自性に舌を巻きます。明らかに際立っている点があります。
かっちりと決めた姿勢です。
あごを引いて上目使い、肩を張り胸を開く。口をキリリと結ぶ。不用意に顔を動かさない。その姿勢を意図して維持する。いわば半沢の型、半沢様式です。
それによって何が得られるかと言えば、圧倒的な目力でしょう。顔も体も動かない分、ちょっと瞳を動かすだけでも非常に際立つ。静かに佇んで語るシーンでさえ、内に溜めてきたマグマのようなものが噴出しているのが伝わってくる。
堺さんの中にある高いテンション、緊張感、ギリギリの意志のようなものが目を通してはっきりとこちらへ届くのです。「とても静かに、見得を切っている」堺さんの姿。私たち視聴者はそれに惹き付けられて釘付けになってしまうのです。
歌舞伎俳優が複数起用されるのは堺さんの演技に対抗するためでもある、という記事を目にしました。ということは、堺雅人は「一人松竹」のようなもの。歌舞伎界が束になってかからないとならないテンションとパワーを持っている、とも言えそうです。