脳梗塞で倒れた人が回復したものの手足に麻痺があるなど、病気やケガが治ったあとに影響が残る症状のことを「後遺症」という。比喩的に、事件や天災などの出来事のあとに残された影響のことも後遺症と呼ぶが、新型コロナウイルスでは生理的な症状と社会的な影響の両方の後遺症を残す恐れがあると言われている。ライターの森鷹久氏が、まだ未確定な「後遺症」のようなものに悩まされる人たちが日常に戻れない様子についてレポートする。
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西日本在住の会社員・田村裕一さん(仮名・40代)は、今年5月に新型コロナウイルスの感染が分かった。咳と微熱があったものの、感染経路もはっきりとしていたことから、病院に2週間ほど入院し、さらに自宅で2週間の経過観察を経て、医師からは「日常生活に戻っても構わない」とお墨付きをもらった。だが…。
「会社に行こうにも、上司も同僚も部下もいい顔をしませんよね。とりあえずリモートワークで、と言われるんですが、私の仕事、現場の施工管理なんですよ。自宅でやる事もないし、いや、現場が稼働してないもんだから、どちらにせよ…」(田村さん)
緊急事態宣言の解除後、田村さんの会社でも徐々に業務が再開された。感染と入院、退院からすでにまる2ヶ月が経ち、そろそろと思っていた田村さんに追い討ちをかけたのは、微熱と頭痛である。
「夜になると、37度台の熱が出て、偏頭痛のような痛みを感じるようになりました。コロナ前にはこういったことはなく、後遺症かと医師にも問い合わせたのですが、よくわからない。上司に正直に話すと、やっぱり来てくれるなとなって…」(田村さん)
二人の子供と、専業主婦の妻と四人暮らしの田村さん。すでに会社に行かなくなって3ヶ月が経った。収入面や会社を解雇されるのではないかという不安、さらに「まだ完治していないのではないか」という疑い、家族にもうつしていないかという懸念が重くのしかかっているという。