大相撲7月場所は4か月ぶりの本場所開催となったが、その観戦スタイルは大きな変容を強いられている。新型コロナウイルス感染防止のために、会場を名古屋から両国国技館に移し、観客は定員1万1000人の4分の1となる1日約2500人が上限とされている。館内ではマスク着用が義務付けられ、場内アナウンスでは大声を出す歓声の自粛と、拍手による応援が呼びかけられている。
そうした注意喚起の場内アナウンスは、土俵入り後や中入りのタイミングで流される。読み上げるのは行司の仕事だ。十両や幕内の取組で関取の出身地、あるいは決まり手をアナウンスするのと同じ声なので、次のような文言が読み上げられると、つい耳を傾けてしまう。
「新型コロナウイルス感染防止のため、入場されてから国技館を退場されるまでできる限りマスクを外さないようにお願いします。お食事は可能な限り控えていただきます。終わられたらすぐにマスクをつけください。熱中症予防のため水分補給は十分に行なってください。なお飲酒は禁止とさせていただきます。
大きな声での声援はお控えいただき、拍手での応援をお願いしたします。特にマスクを外しての声援は絶対におやめください。館内各所にアルコール消毒液を配備しております。随時お使いください。ソーシャルディスタンスを確保するために、マス席では中央にお座りください。座布団や物は絶対に投げないでください。場内ではお手回り品や貴重品にご注意ください。食中毒防止のために弁当は賞味期限内にお食べください」
こんな具合に80秒間で禁止事項をまとめてアナウンスしている。その効果なのか、観客たちの入場後のマナーは「ヤジ」などが問題になっているプロ野球の観客とは大きく異なる。ビールの売り子が球場内を歩くなど、アルコール類が認められているプロ野球と違いって、国技館ではアルコール類の販売と持ち込みが禁止。食事をしようにも売店には国技館地下の工場で作った焼鳥(10本セット1400円)しか売っていない。酔った観客が我慢できずにヤジを飛ばすということもないし、初日に横綱・鶴竜が前頭筆頭の遠藤に敗れた時も座布団が宙に舞うこともなかった。