新型コロナ感染の再拡大で危機感が高まる日本とは対照的に、発生源である中国では一応の抑え込みに成功しているように見える。両国の違いはどこにあるのか。『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)の著者で経済ジャーナリストの浦上早苗氏によると、北京駐在の日本人は半年前からこの事態を予見していたという。
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新型コロナは、どの国や組織にも存在する脆弱さを突いて増殖しているように見える。今回の感染拡大を教訓に、野生動物を食べる文化を変えたいと望み、手洗いや消毒が徹底される今の中国社会を「持続してほしい」と考える中国人は少なくないが、長年受け入れられてきた文化だけに、根本から見直すのは簡単ではない。
日本では、会社優先のカルチャーと、あいまいな指示伝達、そして非常事態でも非常時モードに行動を切り替えられない慣性の強さによって、傷口が広がったように見える。
「帰国命令が出たんです。仕方ないですが、3月頭に日本に戻ります」
日本の大手IT企業の会社員で、北京に駐在する山内さん(仮名・50)は2月下旬、嫌々といった表情だった。山内さんは春節(1月25日)を日本で過ごし、新型コロナがまさに中国全土に拡大していた1月26日に北京に戻ってきた。その頃は早く日本に戻りたいと思っており、「だけど北京の現地社員を見捨てて帰ったと思われると関係が悪くなるから、本社が帰国を命じてくれればいいのに」と考えていた。
ところが北京での仕事が再開すると、次第に「日本の方が危ないのではないか」と感じるようになった。
2月14日までは在宅勤務で、食事も宅配を注文し、一歩も外に出なかった。この頃、宅配で受け取った弁当には応援メッセージが添えられることもあった。17日からは週に2度ほど出社しているが、オフィスを数時間ごとに消毒し、会社が費用を負担して弁当を配達してもらっている。
同じ頃、日本ではクルーズ船で多数の感染者が確認され、市中感染も広がり始めた。にもかかわらず、日本人から危機感は伝わってこなかった。日本の本社でもテレワークが導入されたが、社員の山内さんの目には「政府に言われたからそうした」ように見えた。