藤井聡太棋聖(18)の快進撃が社会的な関心を呼ぶ現在。藤井棋聖の実力と才能を絶賛してやまない「将棋界最高齢YouTuber」が存在する。それが引退棋士の石田和雄九段(73)だ。石田九段は愛知県岡崎市出身。藤井棋聖は瀬戸市出身で、同県の先輩となる。
石田九段は修行時代、名古屋の板谷四郎九段の道場へと通った。板谷四郎九段の子で、やはり棋士となった板谷進九段とは同門にあたる。その進九段の弟子が杉本昌隆八段。藤井棋聖の師匠である。つまり石田九段は藤井棋聖から見れば同門の大叔父(師匠の師匠の弟弟子)にあたる関係だ。
石田九段は現役時、順位戦ではA級(上位10人)にまで昇級し、通算4期在籍した。一方でNHK将棋講座やNHK杯では講談のように面白い名解説で人気を博した。引退後は千葉県柏市で将棋センターを経営する一方、後進の育成に力を注いだ。現在では5人の棋士、1人の女流棋士を門下に持つ名伯楽でもある。
またYouTube上では「石田九段一門将棋チャネル」を開設。自身の名棋譜や、天野宗歩、阪田三吉といった偉大な先人、そして若き弟子たちや藤井棋聖の戦いを熱く語っている。
そんな石田九段に、将棋解説の昔と今についてうかがった。
* * *
──石田九段はかつて「解説名人」として、その大盤解説が大変な好評を博しました。その際に、何か苦労されたようなことはあったでしょうか。
石田:別に苦労は何もしてないですよ(笑)。ありのままでやっただけであってね。スタジオに行った時には毎回緊張感はありました。でも自然でやるのが一番いいと思ってね。要点だけつかんでおいたら、あとは思ったことを言っていく。将棋は長年やってきてるから、手は浮かぶからね。
──石田九段はA級まで進まれた当時のトップクラスでした。一方で「解説名人」と呼ばれるほどの解説の名手でもありました。話し方の勉強などもされたんですか?
石田:全然、全然。でもね、自慢話になっちゃって恐縮ですけど、NHKで(過去の名勝負を解説する番組があり)神田山陽さんに『こんな面白おかしくもない昔の棋譜をこれだけ面白くやったのはあなたの力だ。これは講談のやり方だ。本当に上手い』とかなんとか、えらいほめてもらったことがある(笑)。それはよく覚えています。
──神田山陽さんは愛棋家として知られた高名な講談師ですね。将棋関係者にとっては宝石のような過去の名棋譜であっても、解説がなければ、多くの人には「面白おかしくもない」と感じられてしまう。そこを面白く感じてもらえるかどうかは、解説者にかかってるんですね。
石田:もう三十何年前……いや四十年前か。やんなっちゃうなあ、もう……(笑)