アメリカでは、トランプ大統領やその支持者が「マスクの義務化は不要」という姿勢を見せていることから、マスクの是非が政治論争になってしまっている。自身も医療従事者として多くの経験を積み、医療問題に取り組むライターJ.H. Capron氏は、そうした論争からは距離をおきながら、専門的な観点から、人々が気づかない危険について警告を鳴らす。
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「媒介物」という言葉をよく知らない人のために説明すると、これは病原体に汚染された生物ではない物体を指し、病原体の拡散源となるもののことだ。私から見ると、コロナウイルスのパニックのなかで、ほとんどの人がウイルスやその性質、どのように増殖するかを理解していないことは明らかだ。未知のものへの恐れは知識不足の結果である。そして、無知は人々に病原体を拡散させる不合理な行動をとらせる。
今は21世紀だが、一般の人々が17世紀よりはるかに賢くなったというわけではない。例として20世紀初頭のパンデミックを振り返ってみよう。
1918年に、スペイン風邪(新型インフルエンザ)が世界的に大流行した。まだ医学界はウイルスを発見する初期段階にあり、理論的にはその存在がわかっていたものの、実際にそれを見ることができるようになるのは、1930年代後半に電子顕微鏡が発明されてからである。ウイルスは細菌よりはるかに小さいものだとわかってはいたが、その正体はまだつかめていなかったのである。そして、専門家や公的機関は人々に何を求めたか。ガーゼを5~6枚重ねた布のマスクを着用するように訴えたのである。しかし、当時はマスクの衛生状態について正しい知識がなく、結果的に汚染されたマスクがウイルスの拡散を助長したのではないかと疑われている。
かつて私はアメリカ陸軍の外科技術者だった。私は、マスクの衛生と無菌状態に関わる訓練を受けた。1966年、韓国の臨時病院で感染症の集中治療を経験し、その後、大学で微生物学を含む生物学を専攻した。そうした経験と知識から、私は多くの人とは異なった見方をする。コロナ禍で食料品を買いに行った時、私はショックを受けた。マスクとニトリル手袋をつけた人たちが、平気でマスクの表面を触り、その手で目をこすっていた。彼らはスマートフォンを操作し、店内のあらゆるものに触れた。その店は、専門的な観点からすると、感染の危険に満ちていた。
それから数か月が過ぎた。何か変わっただろうか? 変わらないだけでなく、いまや専門家たちも藁にすがる溺れた人のように見える。彼らがすがる藁のひとつがマスクだ。このAmerican Thinkerでもマスクの効果について多くの議論があったが、私はそれらの論争からは少し距離をおいている。
2018年6月、5人の研究者が「食料品スーパーにおける再利用可能なエコバッグを介したノロウイルス代替物の拡散」と題する研究を発表した。ウイルスの代わりになる物質でエコバッグを汚染し、それを持ってスーパーで買い物をしてもらい、それがどう拡散するかを追跡したところ、どの実験でも店舗全体にそれは拡散されてしまったのである。