【書評】『新型コロナと貧困女子』/中村淳彦・著/宝島社新書/880円+税
【評者】香山リカ(精神科医)
「夜の街」で働く女性たちは、新型コロナウイルス感染症でどんな影響を受けたのか。本書には歌舞伎町や池袋で働く18人の女性のリアルな声が詰まっている。
たとえば地方出身、東京六大学に通う女子大生は、奨学金で学費を払い、ピンサロの報酬で生活費をまかなっている。53歳でバブル世代の父親は公務員、家庭は中流なのに「娘は甘やかさない」と仕送りをほとんどしない。著者の言うとおり、「恵まれた親世代は、現在の大学生を取り巻く環境の変化をなにも知らない」。
現在の一般的なサービス業は非正規労働者を最低賃金で働かせるシステムになっているので、飲食店などで長時間働いても、生活費までは稼げない。やむなく高単価の労働を求め「女子大生は風俗嬢まみれになって」いる、と著者は言う。
学生が働く店はコロナ騒動後も制限をかけながら営業を続けたが、彼女らは「コロナ感染におびえながら出勤し」「収入は半減」という事態に直面する。しかし卒業後には奨学金の返済も待っており、「どっちにしろ卒業まで風俗を続けるしか選択肢がないんです」と語るのだ。どうだろう、「うちの娘は?」と背筋が冷たくなる読者もいるのではないか。