新型コロナウイルスの感染拡大で経済も生活も停滞ムードが続き、何かとネガティブな考えに陥りがちなときに、大相撲夏場所で照ノ富士が5年ぶりに優勝した。直後のTV中継でのインタビューでは「いろいろなことがあったんですけど、こうやって、笑える日がくると思って信じてやってきましたので、一生懸命やったらいいことがあるなと思いました」と話し、あきらめずに努力し続けることには意味があると伝えた。
2020年の大相撲7月場所は、異例ずくめのことばかりだった。新型コロナウイルス対策のため、マス席に座るのは一人に限定、いつもは飲食推奨の大相撲だが、感染対策のためビールはもちろん弁当の販売も中止。唯一、国技館の地下で製造される焼き鳥だけが売られていたが、すぐに売り切れていた。取組も異例続きで、幕内復帰したばかりの照ノ富士には「おめでとう! 勝ち越して」としか相撲ファンも見ていなかった。
「遠くの席からでも、照ノ富士の両膝にはテーピングがしっかり巻かれていて痛々しさが伝わりました。幕内に復帰してきたので勝ち越してほしいなとは思っていましたが、だんだん優勝争いに加わってきて嬉しかったけれど、驚くしかなかったです。だって、序二段まで落ちていたんですよ。上位の関取たちとも互角でしたし、来場所以降の活躍が楽しみです」(国技館で7月場所を観戦した相撲ファン)
照ノ富士が優勝インタビューで言った「いろいろなこと」には、大関に昇進しながら陥落、幕下の序二段まで番付を落としたことがまず、思い出される。大相撲は横綱を頂点にして番付と呼ばれる階級があるが、給料が支払われるのは横綱から順に大関、関脇、小結、前頭、十両まで。それより下は無給で、照ノ富士は昨年春には序二段、下から二番目の階級になっていた。大関で月給200万円だったのに2018年夏からは再び無給に、さらに十両以上だけに許されているタクシー移動ができなくなり、今場所はコロナ対策もあって他の幕下力士と一緒に部屋の車で移動していた。