国内

75年目の原爆の日、改めて読むB29エノラ・ゲイ搭乗員の証言

12人の搭乗員。存命者はいなくなった(『アサヒグラフ』1954年8月11日号)

 1945年8月6日8時15分、広島市上空から投下された小さなパラシュート。そこに取り付けられた原子爆弾により14万人の市民の命が奪われた。コラムニストの石原壮一郎氏がレポートする。

 * * *
 広島と長崎に原子爆弾が投下されてから、75年の歳月が経ちました。原爆も第二次世界大戦も、直接の経験者は少なくなってしまいました。戦争が終わって生まれて戦争を知らずに育った私たちとしては、当事者の声に耳を傾けて、「戦争とは何か」を考え続けることが大切です。

 先日、部屋の大掃除をしていたら、押し入れの奥で一冊の古い『アサヒグラフ』を発掘しました。1954(昭和29)年8月11日号。たぶん10年ぐらい前にネットオークションで入手したものですが、なぜ買ったのか記憶にないし、包んでいるビニールを開封した気配はありません。

 取り出して開いてみると、巻頭は「我々は広島に原爆を投下した」という5ページの記事。原爆を投下したB29「エノラ・ゲイ」号の12人の乗員全員に、当時の気持ちや今の想いをインタビューしています。そっか、これを読もうとしたのか。

「広島の原爆は、日本人もアメリカ人もひっくるめて結局多数の人命を救ったと信じている。なぜなら、原爆は、日本人が稲むらのかげや寺院の塔から我々に挑んだに違いない戦闘をしないで済んだと思えるからだ」

「私は、いまでも後悔の気持ちは全く持っていない。多くの非戦闘員を殺したが、私はこれからでも同じことをやってのけられる。敵だって先に原爆を持ったら、恐らくロサンゼルスやニューヨークに投下していたはずだ」

「(投下直後に)“気の毒な奴さん達!みな殺しだナ”こんなふうに思ったことを記憶している」

 彼らは、たとえばこう語っています。最初のページには、任務を果たして基地に戻った直後に全員で撮った記念写真。みんな笑顔を浮かべています。ページをめくると、乗員が家族と自宅でくつろいでいる写真や職場で働いている写真。広島に原爆を投下してから9年後、それぞれ幸せな日々を送っている様子が伝わってきます。

 すごい記事に出合ってしまいました。語っている内容も衝撃的でしたが、日常的な写真と組み合わせることで、さらに複雑で重いメッセージを伝えてくれようとしているのが、この記事の見どころであり、グラフ誌の真骨頂です。

『アサヒグラフ』1954年8月11日号の表紙

関連キーワード

関連記事

トピックス

SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
漫画家・柳井嵩の母親・登美子役を演じる松嶋菜々子/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
松嶋菜々子、朝ドラ『あんぱん』の母親役に高いモチベーション 脚本は出世作『やまとなでしこ』の中園ミホ氏“闇を感じさせる役”は真骨頂
週刊ポスト
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン