「株式会社石原プロモーションの商号を石原裕次郎の仏前に返還する」──そんな宣言とともに、2021年1月16日をもって58年の歴史に幕を閉じると発表した石原プロ。石原プロは、そもそも日活のスターだった石原裕次郎が1963年に設立したものだ。
1960年代には浅丘ルリ子や黛ジュンなど女性スターも所属していたが、映画の自主制作による負債が膨らみ、経営は窮地に陥っていた。
しかし1971年、裕次郎に心酔する渡哲也が加入。1972年に『太陽にほえろ!』(日本テレビ系、1972~1986年)で裕次郎がテレビドラマに進出したことで一気に流れが変わる。
高視聴率を叩き出した『太陽にほえろ!』でテレビの影響力を思い知った裕次郎は、活動の軸足を映画からテレビに移していくことになる。そしてこの頃から、寺尾聰、神田正輝、舘ひろし、峰竜太など続々と若い俳優たちが裕次郎、渡のもとに集まり「石原軍団」が形成されていく。
ビジネスライクな芸能事務所も多いなか、石原プロは「男気」でつながっていたと、芸能レポーターの石川敏男氏は言う。
「石原軍団は裕次郎さんに惚れた人間の集まり。さらに裕次郎さんを支える渡さんの背中を見て、また惚れる者が生まれた。舘ひろしさんは出会いから今に至るまで渡さんを『親方』と慕っている。
私が女性誌記者をしていた頃、渡さんが温泉に入っているところをグラビア撮影する仕事があったんですが、いきなり裕次郎さんが『哲ひとりじゃつまんないだろ』と裸で入ってきた。本当にサービス精神旺盛なんです。裕次郎さんに一度会うと、みんな好きになってしまう魅力があった」