コロナ禍で、テレビ番組はさまざまな影響を受けているが、映画枠にもちょっとした異変が。『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ系)が5週連続で、アニメ映画を放送するのだ。その狙いとは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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7日夜、『金曜ロードSHOW!』で、アニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』が放送されます。
実は一週間前の7月31日にもアニメ映画『聲の形』が放送され、さらに来週14日には『となりのトトロ』、21日には『コクリコ坂から』、28日には『借りぐらしのアリエッティ』と3週連続でジブリ映画も放送。夏休みの時期に計5週連続でアニメ映画が放送されるのですが、このラインナップにネット上には喜びや期待の声が飛び交っています。
アニメ映画の5週連続放送は、昨年の3週連続、2年前の4週連続、3年前の2週連続と比べても多い数字。しかも今年6~7月の2か月間は8回中6回が洋画だっただけに、大きな変化を感じさせられます。
なぜ今夏の『金曜ロードSHOW!』はここまでアニメ映画にこだわり、そのことが人々の喜びや期待につながっているのでしょうか。掘り下げていくと、単に夏休みの時期だからではなく、さまざまな背景や事情が見えてきます。
夏の風情を感じる貴重なコンテンツ
やはり背景として無視できないのは、新型コロナウイルスの影響。再度の感染拡大によって例年のような開放感はなく、「花火大会や夏祭りは中止」「旅行どころか里帰りもできない」「音楽フェスも甲子園もなし」など、夏を感じて楽しめるものが極端に減ってしまいました。
テレビ番組に目を向けても、相変わらず朝から夜まで新型コロナウイルス関連ばかり。例年のような大型音楽特番が見送られるなど、夏の風情を感じさせるものは少なく、ドラマですら3か月間時期がズレて、いまだに春ドラマが放送されています。
だからこそ唯一、夏休みのムードを感じられるのがアニメ映画。すっかり夏休みの風物詩となったジブリ映画を筆頭に、親子一緒に安心して楽しめる貴重なコンテンツとなっています。
また、異例の5週連続放送は、地域ごとに時期が分散し、しかも例年よりも短くなってしまった子どもたちの夏休みにフィット。本来は楽しみな夏休みであるにもかかわらず、大人同様に外出自粛を余儀なくされる子どもたちを癒すものになるでしょう。
今年のラインナップで特筆すべきは、長年愛され続けるジブリ映画だけでなく、2016年公開の『聲の形』、2017年公開の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』と近年公開の作品をそろえたこと。どちらも子どもたちの目線から描いた物語であり、「日本アカデミー賞優秀賞」を獲得した名作であることも含め、「子どもたちにこの作品を見てほしい」という制作サイドのメッセージ性を感じさせます。