コロナ禍に追い討ちをかけるように、記録的大雨などによる自然災害が私たちの生活を脅かしている。実は今、専門家の間でもっとも懸念されている自然災害は、今後30年以内に70%の確率で来るといわれている南海トラフ巨大地震だ。
ひとたび起きればその被害は東日本大震災の10倍以上と想定される。そうなったら、一体どうなってしまうのか。かねてから地震活動を注視する女優・室井滋さんが、不安と疑問を胸に訪れたのは、京都大学大学院人間・環境学研究科教授で地球科学の専門家、鎌田浩毅さんの研究室だ。室井さんと鎌田教授が緊急対談を行った。
室井:私、富士山がすぐにでも噴火するんじゃないかって、すごく心配なんです。コロナの話題に隠れてますけど、政府は4月に富士山が大噴火した時の被害想定を初めて公表しましたよね。実際、東日本大震災以降、地震が頻発していますし、御嶽山や阿蘇山、それに草津・白根山や箱根でも噴火が起きました。次は富士山なんじゃないかって…。
鎌田:東日本大震災はマグニチュード9という、1000年に一度の巨大地震でした。そのストレスが日本列島全体にかかった影響で、各地で地震が起きています。私たち地球科学者は「3.11」をきっかけに大地変動の時代に入り、少なくとも30年くらいは内陸地震が続くだろうと予測しています。活火山の地下の活動も大きくなっていて、日本にある111の活火山のうち、20個くらいが目覚めて、マグマ溜まりの上で地震が起き始めている。もはやどこが噴火してもおかしくないですし、室井さんの言う通り、富士山もスタンバイ状態に入っています。
室井:やっぱり…。東日本大震災のすぐ後に富士山の直下で大きな地震がありましたけど、あれも噴火の予兆だったんですよね?
鎌田:3.11で富士山の地下20kmにあるマグマが大きく揺すられました。直後の3月15日の地震は富士山の地下14kmが震源で、あの揺れでマグマ溜まりの天井にヒビが入ったんです。
室井:天井にヒビが!?
鎌田:そう。幸い噴火はしませんでしたが、その岩石が割れて、いつ噴火してもおかしくない状態にあるのは確かです。
室井:1707年の宝永噴火からもう300年。昔は50年とか100年のサイクルで噴火していたと聞いたことがあるんですけど。
鎌田:さすが、よくご存じですね。500年前からそのサイクルが変わって、宝永噴火までに200年間隔があいた。200年分マグマを溜め込んでからドーンといったので、大噴火になったんです。江戸の町には火山灰が5cmも積もりました。単純計算すれば、今度は300年間マグマを溜め込んでいるので、噴火の規模は宝永時の5割増しになります。