今、専門家の間でもっとも懸念されている自然災害は、今後30年以内に70%の確率で来るとされる南海トラフ巨大地震だ。ひとたび起きればその被害は東日本大震災の10倍以上と想定される。そうなったら、一体どうなってしまうのか。かねてから地震活動を注視する女優・室井滋さんが、不安と疑問を胸に訪れたのは、京都大学大学院人間・環境学研究科教授で地球科学の専門家、鎌田浩毅さんの研究室だ。室井さんが、鎌田教授に南海トラフ地震について聞く。
室井:もう、すぐにも富士山が噴火するなんていう記事もチラホラ見かけるので、すごく不安なんですけど、その可能性もあるんですか?
鎌田:いや、噴火するとしたら南海トラフ巨大地震の後でしょう。「3.11」でマグマ溜まりが揺すられて、直後の直下地震で天井にヒビが入っても噴火しなかった。だけど、次に大きく揺すられた時に噴火する可能性は非常に高い。次の巨大地震はマグニチュード9クラスですから。宝永噴火も、南海トラフで起きた宝永地震の49日後に起きました。
室井:どうして富士山噴火と南海トラフ巨大地震が連動するんですか? 地震に興味があるのでいろいろ記事も読むんですが、8月か9月にも南海トラフ巨大地震が来て、それに付随して噴火も起きるんじゃないかって話もありますよね。だから私は今日、それを伺いに来ちゃったんです。
鎌田:ぼくが一生懸命言っているのは、今じゃないですよってことなんです。まず、なぜ2つが連動するのかというところから説明しますが、富士山は南海トラフの東端の駿河トラフと、相模トラフを陸上へ延長した線の交点にあるんです。プレートとプレートの境目にあるから、マグマの供給量が多くて、噴火の量も大きい。だから日本一の山なんですよ。
――日本列島は、4枚のプレートが関わってできている世界でも稀な場所だ。東の沖合では海側の太平洋プレートが陸側の北米プレートに沈み込んでいて、そのたわみに耐えきれなくなると、陸側のプレートが元に戻ろうとして跳ね返る。こうして発生したのが東日本大震災だった。一方、南の沖合ではフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込み、駿河湾から四国・九州の沖合まで連なる南海トラフを形成している。ここを震源域に発生するのが南海トラフ巨大地震だ。