社会から暴力団を排除する。そのために市民が暴力団と金品のやりとりをすること(利益供与)を禁止する──そんな暴力団排除条例(暴排条例)が47都道府県で施行されてから10年近くが経過。さらに昨年には東京都が、東京五輪の開催に向けさらなる罰則強化を行い、銀座や新宿歌舞伎町などの「特定地域」では、暴力団に「みかじめ料」を払った店を“即時”に罰則対象とすることとなった(同様の条例が京都府や愛知県など10数自治体で施行)。
「みかじめ料」とは、店に対し暴力団が、「用心棒」などの“後見”を行う立場に就くことで、その見返りに金銭を受け取ること。この構図は飲食店において非常によく見られたとして、20年以上暴力団の取材を続け『サカナとヤクザ』や『ヤクザ500人とメシを食いました!』などの著書がある鈴木智彦氏が語る。
「ヤクザの儲け方というのは暴力を看板に、『短期間』で『濡れ手で粟』が原則です。みかじめ料は、その代表格的な手段でした。かつて天むすが流行った時期に山口組傘下の某組織が、おにぎり屋を経営している企業からみかじめ料を取っていたことがありました。
暴排条例以降はみかじめ料を取るヤクザは減り、ヤクザ実質支配下にありながら、表面上はカタギであるフロント、『企業舎弟』に飲食業をさせるなどして利益を得るのが主流になりました。イタリアンレストランや居酒屋、焼き肉店、スナックなど、さまざまな飲食店を出しているパターンがあります」
企業舎弟が経営するにしても一般人が経営するにしても、人気店にしなければ飲食店は立ち行かない。日本には約3万のラーメン店があり、「競争の激しいラーメン業界に参入しているヤクザもいるかもしれないが、苦労しているはず」(前出、鈴木氏)というのが現状だ。
ただ、ヤクザがラーメンに対し並々ならぬ思いを持っていたらどうだろうか。合法、非合法のさまざまな手法に明るヤクザがラーメン店経営にも乗り出す姿が描かれる『闇金ウシジマくん外伝 らーめん滑皮さん』(真鍋昌平・原作/山崎童々・漫画)がそれだ。同作はコミックの累計発行部数1700万部超、実写化作品もヒットを記録した『闇金ウシジマくん』(真鍋昌平・作)のスピンオフマンガ。登場するヤクザ・滑皮秀信(なめりかわ・ひでのぶ)と情報屋の戌亥(いぬい)の2人を主人公に、豚骨系、インスパイア系、油そばからコンビニ麺まで、様々な種類のラーメンを後景にしながら、ストーリーが展開する。
グルメマンガさながらの描写に加え、滑皮がラーメンを食す様々な場面では、汁をスーツに飛び散らせながらも豪快に食らいつく姿も描かれている。同時に、闇社会の人間模様として、暴走族の元ヘッド・愛沢浩司(あいざわ・こうじ)が始めたラーメン店で滑皮が経営を買って出(脅し)て、店が繁盛し、儲けにしていくストーリーも登場する。