日本国内は「第4次韓流ブーム」に沸いている。火付け役となったのはNetflixで配信中の『愛の不時着』や『梨泰院(イテウォン)クラス』。そして、K-POPアイドルのオーディションに密着した『Nizi Project』が決定打になったといわれている。韓国文化に詳しい専門家たちは、「第4次ブームはいままでと違う」と口をそろえる。
けた違いの労力をかけて書かれた「脚本」が韓国ドラマの強み
韓流ドラマの「お決まり」を崩したのが、2016年にヒットしたコン・ユ(41才)主演の『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』だ。韓国ドラマに詳しい作家の康熙奉(カンヒボン)さんが言う。
「韓国は何をやっても恋愛ドラマになるといわれてきました。医者のドラマなら医者同士が恋愛し、刑事ドラマなら結局、刑事の男女が恋愛する。しかし『トッケビ』は、ファンタジーでありながら人間の生と死を根源的に見つめた作品で、この頃から韓国ドラマは新境地を模索していたように思います」
そして、映画『私の頭の中の消しゴム』『四月の雪』でもヒロインを務めたソン・イェジン(38才)と、ヒョンビン(37才)という人気俳優たちが主役のラブストーリーでありながら、奇想天外な設定で「政治的なタブー」に足を踏み込んだのが『愛の不時着』だ。韓国・ソウルの財閥令嬢がパラグライダーで北朝鮮に不時着。現地の将校と恋に落ちる切ない物語に嗚咽する人が続出した。康さんが続ける。
「誰にとっても不透明で気になる存在である北朝鮮をネガティブに登場させるのではなく、庶民の生活をリアルに描き、身近で人間味あふれる存在として展開したことが斬新でした。韓国ならではのテーマと主役2人の魅力に、偶然にもコロナ禍が重なったことがヒットの要因でしょう」
ヨン様ブームの時代から韓流を追いかけ続ける「韓国ウオッチャー」の児玉愛子さんは、韓国エンタメが持つ「コンテンツの強さ」を『愛の不時着』が証明したと語る。
「いくら家でドラマを見る機会が増えても、作品がつまらなければバカにされて終わります。『愛の不時着』はハイレベルなアクションシーンも多く、時間もお金もかけて作られている。国家レベルの“現代版ロミジュリ”は韓国人にも新鮮でしたが、日本人にとっても魅力的でした」