今、専門家の間でもっとも懸念されている自然災害は、今後30年以内に70%の確率で来るとされる南海トラフ巨大地震だ。ひとたび起きればその被害は東日本大震災の10倍以上と想定される。京都大学大学院人間・環境学研究科教授で地球科学の専門家、鎌田浩毅さんによると、南海トラフ地震はだいたい100年周期で起きており、科学的データから見れば次起きるのは「2035年±5年」だという。
もしも南海トラフ地震が起きたら、一体どうなってしまうのか。さらに、南海トラフ地震と連動して富士山が噴火するともいわれている。かねてから地震活動を注視する女優・室井滋さんが、鎌田教授の研究室を訪れた。南海トラフ地震、富士山噴火、そして首都直下地震について、室井さんが鎌田教授に聞く。
室井:南海トラフ巨大地震の後、いつ富士山が噴火するか。宝永噴火の時は49日後でしたが、最新の研究では予知も可能なんですか?
鎌田:はい。1か月くらい前にはわかります。最初に、マグマで熱せられた地下水など「マグマに由来する液体」がゆらゆらと揺れることで地震が発生します。「低周波地震」とも呼ばれ、揺れは人体には感じられないくらい微弱です。
次に、マグマが火道を埋めている岩石を割って上昇してくる時に「高周波地震」が起こる。これは人間の体でも感じることができるので、「有感地震」とも言います。さらに噴火の直前には、火道の中をマグマや火山ガスが上昇する時に「火山性微動」が起こり、それから噴火する。この間に1か月くらいかかるので、充分準備する時間はあると思います。
室井:富士山の噴火には、私たちは具体的にどんな備えをしておけばいいんでしょう。
鎌田:火山灰を体に入れないことが第一です。外に出る時は帽子を被り、手袋をして、マスクとゴーグルをつけて、レインコートを着る。家に入る前に玄関の外で火山灰を全部はらって、絶対に家の中に入れない。家には窓などに目張りをして火山灰が家の中で舞わないようにしてください。それが最低限かつ一番重要なことです。