アメリカ大統領選挙の世論調査に少々変化が生じている。トランプ氏とバイデン氏の差がほんの少しではあるが詰まってきたのである。NY在住ジャーナリスト・佐藤則男氏は「小さな、しかし見逃せない変化」だと分析する。
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メディア各社などの世論調査結果を集めて平均値を出し、分析しているReal Clear Politics社の発表によると、バイデン氏とトランプ大統領の最新の支持率は、全国平均で次のようになっている。
バイデン:49.1%
トランプ:42.7%
バイデン氏の二けたのリードは消えた。小さな変化だが、見逃せない意味を持つ。世論調査に上機嫌だった民主党やバイデン氏の背後にいる人たち、リベラルなジャーナリストたちは顔を曇らせていることだろう。さらに、CBSテレビの調査によれば、バイデン支持者の60%はトランプ大統領に反感を持つ人たちだった。つまり、バイデン支持者とはいうものの、バイデン氏個人を支持しているかは怪しいのである。
激戦区は、次のようになっている。
ウィスコンシン州:48.0対43.0(バイデン対トランプ。以下同)
ノースカロライナ州:49.3対44.7
ジョージア州:45.6対47.2
フロリダ州:49.7対45.7
ペンシルベニア州:48.7対44.0
アリゾナ州:48.7対45.0
ほとんどの州で、統計的誤差の範囲内である。最大の原因は、トランプ大統領のバイデン叩きが本格的に始まったことである。バイデン氏を「極端な左翼分子と結びつき、アメリカを社会主義者が支配する国にしようとしている」と批判し、「オバマ政権の副大統領として中国を甘やかしてきた」などと攻撃する。事実に基づかない発言も多く指摘されているものの、やはり迫力がある。
メディアの論調にも変化が見られる。リベラルメディアの一つであるCBSテレビが、バイデン氏へのインタビューで、バイデン陣営が恐れる年齢問題に関して、認知症という言葉まで使って突っ込んだ質問をしたのである。これは、トランプ氏が繰り返し攻撃しているポイントでもある。3大ネットワークの報道だからインパクトは大きい。
バイデン氏は質問を笑い飛ばすと同時に、「そんな愚かなことを聞くなんてとんでもない」と怒るそぶりを見せたが、質問には直接答えなかった。これは失策だ。今後、メディアは専門医の診断を求めるなど、繰り返し話題にするだろう。それだけでバイデン氏には大きなマイナスになる。