新型コロナ禍が世界の自動車業界に激震をもたらす中、バブル時代に一世を風靡し、三菱自動車のブランドイメージのけん引役を担ってきたクロスカントリー4×4、「パジェロ」が2021年上半期までに生産終了することが正式にアナウンスされた。パジェロを捨てた三菱自動車は、この先どうやって生き残るのか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。
* * *
三菱自動車「パジェロ」の第1世代モデルが登場したのは1982年。世界での知名度の高さのわりには40年足らずという短い年月での幕引きは、一瞬強烈な輝きを放って落ちていった三菱自動車の栄枯盛衰と見事に重なる。まさに「乱世、夢幻の如し」といった感がある。
もっとも、パジェロの生産終了は既定路線。すでに日本では昨年ディスコン(カタログ落ち)となり、他の主要市場でも続々と販売終了となっている。世界はコロナ禍の真っ只中だが、パジェロの終焉はそれとは関係なく、既定路線だった。ゆえに、パジェロが終わりを迎えるという話に驚いたファンは少数派だろう。
関心は終わったことよりむしろ未来だ。パジェロはお蔵入りになったことは致し方がないとして、三菱自動車はこの先どう経営を立て直し、どんなクルマ作りをしていこうとしているのか。それは三菱自動車というブランドに特別な感情を抱かせるようなパワーを発揮し得るのか。
三菱自動車は昨年6月の株主総会で「スモール・バット・ビューティフル(小さい、しかし美しい)」という新しいコーポレートメッセージを公表した。理想像としているのは、販売台数は少なくともキラリと光るものを持った高収益企業だ。この時点では、パジェロを作っている子会社、パジェロ製造は存続させたいという考えであったし、世界の主要市場で頑張るつもりであった。
ところが今年7月27日に発表した今後3年の経営方針を示す中期経営計画は、昨年6月の株主総会の時から大きく方向転換していた。そうさせたのは言うまでもなく“コロナ・ショック”だ。三菱自動車は1996年の北米でのセクハラ事件以来、数多くの企業不祥事を起こし、台所事情は常に火の車。余力がほとんどない状態でコロナ・ショックに直面してしまったのである。