改革のシンボルになる
まずは「時間改革」。秀岳館では1日8時間の猛練習を課すこともできたが、公立校で練習時間が限られる県岐商ではそんな時間の余裕はない。決して広いとは言い難いグラウンドで、ゲージの配置を工夫して5か所でバッティング練習を行うなど、スペースと時間を効率よく使って、秀岳館に近いメニューを選手はこなしていった。鍛治舎監督は就任の前から当時の部員にスポーツテストを課し、選手に具体的な数値目標を与えた。それにより、投手の球速や野手の走力、スイングスピードに着実な変化がみられていく。
第三者から見て分かりやすいのは「ユニフォーム改革」だ。白地に濃紺の「GIFUSHO」と書かれた伝統校然としたシンプルなデザインだったのが、今回の甲子園では薄い黄色のストライプが入った白地に、青の文字で「GIFUSHO」と書かれた奇抜なデザインに。そう、配色は秀岳館にそっくりだ。
それまで濃紺の下地に「G」の一文字だった帽子は、鮮やかなブルー地に「Ken Gifusho」と斜体をかけた筆記体へとフルモデルチェンジした。
そしてストッキングも、中学硬式野球のオール枚方ボーイズや秀岳館など、鍛治舎監督が率いてきたチーム同様、黄色地に。これは足を速く見せる効果があるとかないとか。
私は草案の段階から話を聞いていたが、そこからマイナーチェンジを繰り返し、昨秋、東海大会で準優勝した際には、オレンジの胸の文字がお気に召さなかった様子で、「青色に変更したい」と話していた。そして、交流試合ではその言葉通りの配色となっていた。
100年近い歴史のある伝統校のユニフォームを変更することは多くのOBから反発があったはずだ。それを鍛治舎監督に問い質すと、明快にこう返答した。
「いちいちOBの声を気にしていたら改革なんてできません。私自身、ユニフォームのデザインに強いこだわりがあるわけではありませんが、ユニフォームの刷新が、分かりやすい改革のシンボルになればいい」
いつしか私立に目が向いていた県内の有力中学生が、改革を重ねる鍛治舎監督の元に集まるようになり、昨秋は岐阜大会を制し、東海大会でも準優勝。今春の選抜出場を決めた。