民主党大統領選候補のジョー・バイデン氏のラニングメイトとして、カマラ・ ハリス上院議員が選ばれた。アメリカのリベラルメディアでは、バイデン氏はベストな人物を選んだと評価されている。しかし、約1か月前に「ハリス副大統領候補」を予想していたニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏は、彼女のキャリアと実力を評価したうえで、バイデン陣営の「賭け」でもあると指摘する。
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バイデン氏は早くから、副大統領候補は女性を指名すると宣言していた。候補として数人の候補が挙がっていたが、その中で、白人ではなく、勉学に秀で、法曹界を歩んでカルフォルニア州司法長官、上院議員にまで上り詰めたスーパーウーマンであるハリス氏は、早くから有力候補と目されてきた。移民の家族に生まれ、懸命の努力でキャリアを築いてきた女性である。アメリカンヒロインとして認められて然るべきだと筆者も思う。候補に挙がった数人のなかでも、最もふさわしいと感じていた。
ただし、今後の戦いは簡単ではない。バイデン氏のランニングメイトとして、共和党のトランプ大統領とペンス副大統領と正面から戦うわけである。これまでのように法律家としての口調と論理は通用せず、時には言葉を極めて個人攻撃もしてくる老獪なベテラン2人とわたりあっていかなければならない。最初の攻撃材料は、おそらくバイデン氏との政策的な不一致になると思われる。
すでに共和党のベテラン議員は、「予備選では極端なプログレシブ派(進歩主義・革新)の肩を持ち、バイデン氏を古い政治家だと攻撃していた。テレビ討論では、人種差別者であるとまで言っていた。2人がパートナーになるのはおかしい」と指摘している。
これ以外にも、ハリス氏はバイデン氏が女性蔑視と受け取られる発言をしていたことも厳しく批判した。共和党の重鎮は、「この指名はバイデン氏自身の決定ではない。民主党の決定だ」と言い切る。たしかにそれは当たっていると思う。予備選で、民主党はバイデン氏のような中道路線と、サンダース候補など極端な左派とに分裂した。今回の指名は、分断された党を一つにまとめる意図があったことは明白だ。ただし、バイデン氏のコアな支持者たちは、左派を取り込むことに積極的ではないのである。そのかりそめの同盟をトランプ氏が見逃すはずはない。