「感染者を非難・批判しないように」というコンセンサスは広がりつつあるが、感染者が市中に出れば話は別。感染の事実を隠して出社した社員が解雇処分となった場合、これは妥当なのか? 弁護士の竹下正己氏が回答した。
【質問】
中間管理職です。私の部下が家族内感染して入院中。会社は、この部下が事実を隠し、出社したとして解雇を決定。感染拡大のリスクがあるのに、出社した罪は大きいとの判断のようです。ただ、自覚症状のない感染で、自ら言い出しづらかった部下の気持ちもわからなくはありません。部下を救う手立てはないでしょうか。
【回答】
会社が従業員を解雇するには、就業規則に定められた解雇事由に該当することが前提で、さらに解雇権の濫用にならないことが必要です。その就業規則の「解雇の事由」に該当しない限り、会社は従業員を解雇できません。
就業規則は職場によって様々ですが、伝染病を解雇事由に定めている就業規則はないはず。あなたの会社も病気自体ではなく、家族感染を知りながら出社し、職場に感染拡大のリスクをもたらしたことを理由にしていると思われます。
厚労省のモデル就業規則で検討すると、解雇事由中に含まれている懲戒事由の中の「故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき」に該当する、という理屈が考えられます。