放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、読了した様々な書籍のなかから、大衆芸能を後生に伝えるものを中心にお届けする。
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マスコミ渡世で生きていると、出版社やら著者から本が贈られてくる。ただでさえ追いつかないのに“書店のぞき”が趣味だから、いつか読むだろうと気になるものをつい買ってしまう。
昨年11月に刊行されて全5巻のぶ厚い『全著作〈森繁久彌コレクション〉』(藤原書店)が完結した。“銀幕の天才、最後の文人”の集大成とある。果して私は生涯をかけてこれを読むのだろうか。一緒によく仕事もする放送作家の和田尚久が「私も書いてますんで……」とこれまたぶ厚い『演劇とメディアの20世紀』(森話社)なる固そな本。私が出た日芸放送学科のゼミかと思った。帯に“舞台と人とをつなぐもの”とある。このコロナ禍には考えさせられる問題だ。
色んな人に話をきいといてくれて有難うと言いたいのが『テレビの荒野を歩いた人たち』ペリー荻野(新潮社)。1953年、何もない所から本放送がスタート。答えがみえないままの挑戦である。演芸関係では『喬太郎のいる場所』橘蓮二(CCCメディアハウス)。何冊もの噺家・演芸家の写真集を出している橘が、今回は柳家喬太郎だけに焦点をしぼり文章も書いている。この男とは私も連名で数冊出版している。