お盆休み最終日の8月16日、今年は風物詩のUターンラッシュは見られなかった。新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、今年の夏は旅行や帰省を自粛する人が多かった。気温が下がってウイルスがさらに勢いづくこの先の秋、冬も、どこにも行けない日が続くかもしれない。
ところがそんな状況で、里帰りを楽しんだ人もいる。都内在住の40代女性が言う。
「故郷の両親は高齢のため会いに行くべきか迷いましたが、自費でPCR検査を受け、陰性を確認してから帰省しました。5月の連休も帰れなかったので、新型コロナが発生してから初めて親の顔を見ることができて安心しました。もちろん帰省先では感染予防を徹底して、実家からほとんど外に出ませんでした」
いま、この女性のように「自己防衛」する人が増えている──。
新型コロナに感染しているかどうかを判断するPCR検査の環境が変わりつつある。第1波の最中は保健所が必要性を認めないと検査を受け付けてもらえず、症状が出ても検査を受けられない「検査難民」が続出した。
現在は検査数が増えて1日あたりの最大能力は5万件。健康保険がきく行政検査はあくまでも「医師が必要と判断した場合」などに限られるが、症状や濃厚接触の有無にかかわらず、自由診療でPCR検査を実施する医療機関が増加している。
自主的に受ける検査は保険外診療扱いなので2万~4万円ほどの費用がかかる。病院によっては陰性を示す「陰性証明書」を受け取ることもできる。
たしかにPCR検査には、感染しているのに陰性と判定される「偽陰性」や、感染していないのに陽性と判定される「偽陽性」が一定の確率で表れることが問題視されており、検査拡大に否定的な意見もある。だが、ナビタスクリニック理事長の久住英二さんは「それでも検査拡大は必要」と語る。
「新型コロナは無症状でも人に感染させるため、無症状者を検査してチェックしないと感染拡大を止められません。特にハイリスクの高齢者とかかわる人は、症状がなくても検査をする必要があります。また、人と会って経済活動をする場合も検査は欠かせません。検査することは、運転するのにシートベルトをつけるようなものなのです」