馬術選手の法華津寛氏(79)は、日本選手最年長の71歳4か月で2012年のロンドン五輪に出場。2020年東京五輪の日本馬術連盟の五輪代表選手リストにも名を連ねていた“生きるレジェンド”だ。法華津氏が2021年の東京五輪に出場すれば80歳4か月の史上最高齢出場となる。法華津氏は昭和、平成、令和の3時代での出場を目指しながらも、外資系医薬品会社社長を務めた経験から「来年7月の五輪は難しい」と苦しい胸の内を明かした。
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1964年、私は23歳で初めて東京オリンピックに出場しました。それから56年、二度目の東京オリンピックに挑戦し、「東京で始まり東京で終わる」というスポーツ人生を夢見てきました。しかし残念ながら2020年の東京五輪は延期になり、再度挑戦を試みコロナの被害の少ないポルトガルにとどまり毎日トレーニングに励んでいます。
そしてここに来て、来年の東京五輪開催にすら暗雲が垂れ込めている。トヨタ自動車は東京五輪のために大会運営用の車を4000台弱用意しました。この車は倉庫で眠ったままです。アシックスが用意した公式グッズの衣料品は色落ちしないよう温度管理された倉庫で保存されている。2021年の五輪が中止になれば、こうした高額の負担をして下さっているスポンサー企業に大変申し訳ないことになる。
選手たちも来年の開催を期待している。選手やスポンサー企業のために是非とも五輪を開催したいという関係者の気持ちも良く分かります。
しかし、新型コロナをめぐる状況は厳しい。日本でも感染者が増え続けていますし、アメリカでも感染拡大のスピードは落ちる気配がありません。南米・インド・南アフリカも増え続けています。世界中で第二波とおぼしき感染拡大が報告されています。
ワクチンは開発競争が盛んで、期待できる治験結果が出ているものもあるようです。それでも、ワクチンを接種しても持続性のあるコロナ抗体ができにくいという想定もある。イギリスのワクチン研究の専門家組織の座長は、今開発されているワクチンは生涯免疫を得られるようなものではなく、1年程度の免疫を得られるか、コロナの症状を緩和するだけにとどまる可能性が高いという見解を示しています。感染者の10%にしか感染を予防する量の抗体ができないというスウェーデンの研究や、5%の感染者にしか必要量の抗体ができないというアメリカの研究もあります。