芸能

下條アトム その役としてそこで生きる。それが今のテーマ

下條アトムの「今のテーマ」とは

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、『男はつらいよ』シリーズでの3代目・おいちゃん役で知られる父・下條正巳から役者として言われたことについて語った言葉をお届けする。

 * * *
 下條アトムの父親は、名バイプレーヤーとして知られた下條正巳である。両者は映画、舞台、テレビドラマで何度も共演している。

「共演していて、僕がダメな時はちゃんと言ってくれました。見て見ぬふりはしません。そこは凄く厳しかったです。

『あれは古い芝居だな』って言われたことがあります。何十年も先輩の人から『古い』と言われるわけですから、ズキーンと来ますよ。

『古い』とはどういうことかは恥ずかしいからあまり言いたくはないのですが──ようは自分の引き出しの中からはやるな、ということですね。

 それなりにキャリアを積むと、いろいろ持っているものはあるんです。それでついつい、自分の経験した中から『これでいいかな』というところに逃げちゃう。そのほうが楽だから。この程度をやっておけば、その場はしのげちゃうんですよ。

 そういう楽なところに行くことを、親父は『古い』と言っていました。やはりパターンではなく、その場その場で新たにやらないといけない。人間も違えば、その場の感情も違うわけですから。

『一つ一つの演技を大事にしないで、そういう楽なことをしていると、結局はダメになっちゃうぞ』
『この世界は一つ一つが勝負だから、絶対に息を抜くな』

 ということを親父は綿々と話していました。これも僕が愚かなんですが、その時には分からなくて、後になってふと気づくんです。『あ、これは親父が言っていたことだな』と。

 今でも親父の墓に行っちゃいます。それで『わからねえ。ダメだ』なんて言ったりしてね」

 一九八〇年代は、二時間ドラマなどで犯人役を演じている。その場合、人が好さそう、気が弱そうに見せて実は──という展開が少なくなかった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン