アメリカでは、相変わらず「マスク論争」が盛んだ。トランプ支持者は「不要論」を唱え、反トランプ陣営は「義務化せよ」と叫ぶ。これが大統領選挙の代理戦争のように扱われるのは好ましいことではないが、日本でも「マスク警察」が問題になっているように、極端な論には弊害も多い。ブロガー、作家、編集者などマルチに活躍するWilliam Sullivan氏は、これ以上の規制に反対論を唱える。
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ジョー・バイデン氏は最近、「すべてのアメリカ人は、少なくともあと3か月は外出する時にマスクをするべきだ。どの知事もマスク着用を義務づけるべきだ」と言って、マスク・ヒステリーを最大限に引き上げようとした。しかし、多くの地域で、いまそのような規制強化をすべき理由はない。むしろ、マスクの義務化は撤回すべきだ。
マスクの有効性について少しでも疑問を呈すると、マスク信者たちから「咳やくしゃみで飛ぶ飛沫がマスクで抑えられることは間違いない」と反論される。それは事実かもしれないが、マスクを正しく使用することは簡単ではないし、皆ができていることではない。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると、マスクを安全かつ効果的に使用するためには、必ず手を洗ってから装着すること(そんな人をほとんど見たことがない)、マスク表面に触れたり首にかけたりしないこと(そういう人はよく見る)、マスクは「使用のたびに洗う」ことが必要だ。
現実は理論通りにいかないことが多い。ロックダウンやマスクを推奨する人たちは最近、ハワイの事例に頭を悩ませている。この絶海の孤島群で構成される州では、早くから観光業を閉鎖し、ロックダウンとマスク規制を導入した。にもかかわらず、ハワイの感染率は全米でもトップクラスであり、マスクが義務化されていない州で感染率がもっと低いところはたくさんあるのである。
もう少し太平洋を西に行ってみると、フィリピンは厳しいマスク規制をしていることで知られるが、患者数も死亡者数も急増している。一方、北欧スウェーデンではマスク規制はほとんど存在しないが、患者数は減少し続けており、日々の死亡者数はゼロに近づいた。マスクの有効性を強調する人たちは、感染拡大している場所では規制を破ってマスクをしていない人や、食事をする時にマスクを外すことによって感染が起きているのだと主張することも多いが、それではスウェーデンが終息に向かっている説明はできない。