どことなく息苦しさを覚えるのはマスクのせいだけではないはずだ。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察した。
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SNSの世界、特に最近のツイッター界は何かとギスギスしていて、すぐに荒れる。ついこないだも、「#Amazonプライム解約運動」というハッシュタグがトレンドワード入りし、罵倒合戦のような状態になっていた。すでに騒動の経緯を整理した記事などが出ているので、詳細は省くが、どういった騒ぎになっていたかざっとさらっておこう。
要は、国際政治学者の三浦瑠麗氏が、「Amazonプライムビデオ」のCMに出演していて、それが思想的に偏った人物を起用するなんてとんでもないことだとされ、プライムビデオを契約している人は今こそ解約しよう、という「運動」が8月17日から起きたのである。
三浦氏は、過去に、北朝鮮のテロリストが日本の大都市に潜入している可能性があるとか、戦争を起こさないためにはお年寄りや女性も含めた徴兵制を導入すべきだとかといった発言や自論を展開している。そうしたことから彼女を「危険なウヨク」と見なしていた人々が、彼女を使ったアマゾンに対して不買運動のようなことをいきなり始めたわけだ。そのうちの多くが三浦氏に罵倒の言葉を投げつけながら……。
それに対して、この「運動」を批判する側の声も一気に大きくなった。アマゾンプライムをやめた、という人々の中には、三浦氏云々と関係なく「いい機会だから不要な定額制サービスを整理してみた」といった断捨離派もけっこう混じっていたように見えたのだけれど、「運動」批判派たちは、これを「サヨクの蛮行」と全面否定。そして、左翼やリベラルが、どれほどヒステリックな連中であるかなど、これまた思いつく限りの罵詈雑言を浴びせかけていた。
私としては、ハッシュタグを使った負の感情の連鎖を促すような「運動」のやり方はいかがなものかと思うと同時に、上記のような対立図式でまたぞろギスギスしていくことは本当に不毛だ、という感想だ。
「運動」の「成果」かどうかは不明だが、問題のCM動画は19日までにYouTubeで閲覧できなくなってしまった。単に、契約期間が終了したからかもしれないが、もし騒動のせいでAmazonが手を引いたのなら、言論の自由を集団によるクレームが抑圧する悪しき前例がひとつ増えたといえよう。
今回はたまたま「サヨク」の側が起こしたクレームの「運動」だったが、こんどは「ウヨク」側が同じような動きを見せる可能性だって大いにある。たとえば、有名人のリベラルな政治的発言を「売国奴め!」と問題視し、ハッシュタグを使ってその有名人が出ているテレビ番組のスポンサーを攻撃するなどといったことは、すでに以前、嫌韓運動で似たような騒ぎになったような……。
軽く時事ネタに触れるところから書いてみるつもりが長くなってしまったが、なんにせよ、こういう不毛でギスギスとした争いごとを目にすると、こっちの精神状態も悪化する。ああ、またいかれたノイジーマイノリティたちが騒いでいるね、と軽く受け流すつもりでも、いつしかメンタル的にマイナスなものが蓄積してしまう。
それでなくても、アンダーコロナで鬱々となりがちな日々なのだ。人とリアルで会うことが激減し、そのぶんネット端末に向かう時間が増え、そのネット社会の中で要らぬ負の感情を見せつけられる。ならば、ご機嫌な動画鑑賞などで溜まっているものを晴らそうとすれば、こんどは没入しすぎて、昼夜逆転。生活リズムを崩し、余計に不健康なことになってしまう。そこまでダメダメなのは私の自業自得だが、巷では「コロナうつ」になっている人も増えていると聞く。
そう、今回のコラムでは、アンダーコロナ世界におけるメンタルヘルス問題について書きたいのだ。