「お箸をきちんと持てないと、お嫁に行けなくなるわよ」――。子供の頃、厳しく教えられたマナーの大切さがわかるのは、大人になってからだろう。お金や学歴では測れない、一生モノの武器。それこそが“育ちのよさ”だ。
「家柄や育った環境は変えられない」と思うかもしれないが、それは間違いだ。『「育ちがいい人」だけが知っていること』(ダイヤモンド社)の著者で、皇室やVIPなど、本物の“良家”の人々のアテンダントを務めてきた、マナースクール「ライビウム」代表の諏内えみさんが言う。
「“育ちのよさ”は、生まれ育った家の裕福さや受けてきた教育とは関係ありません。“育ち”とは、そのかたのちょっとした身のこなしや言葉遣いに表れる、印象やたたずまいのこと。今日までの生き方が表れます。過去の積み重ねよりも、これからの日々の過ごし方で、何才からでも身につけられるのです」(諏内さん・以下同)
諏内さんは自身の教室で、多くの人に婚活や就活、お受験の場で役立つマナーを教えてきた。“育ちのよさ”は、ただマナーを守ること以前に、相手を敬う気持ちや、そこから生まれる心地よい振る舞いからにじみ出るものだという。
諏内さんによれば、最近の40代の女性は、育ちのよさを感じさせる人とそうでない人が二極化しているという。
「講師をしていますと、“いちばん正しいマナーを教えてください”とか“正解は?”と聞かれることがとても多いのです。ですが、すぐに“白か黒か”“唯一の正解”だけを知りたがるのは、自信のなさの表れともいえます。
一方で、“良家”のかたがたをはじめ、自分を大切になさって、日々を丁寧に生きているかたは、暮らしにも心にも余裕があり、自信がある。その場に合わせて相手を思いやり、自分で考えて適切な振る舞いができると、“育ちがいい”と感じさせます」
育ちのよさを感じさせる人は、受験、就活、婚活などの人生の大きな節目はもちろん、普段から相手によい印象を与え、信頼を得やすいため、よい人間関係を保ちやすい。上品な振る舞いを身につけた人のなかには、何度も失敗していた縁談がトントン拍子にまとまったり、急に昇進したりと、周囲からの評価が大きく変わったケースも少なくないという。
反対に、育ちが悪いと思われると、相手から軽んじられて自分が損をすることが増える。さらに、夫(妻)の仕事関係の人に会うときや子供の面談、受験の面接などで失敗すれば、自分だけでなく、家族も恥ずかしい思いをするかもしれない。
では、どんなところに“育ち”は出るのだろうか。