新型コロナウイルスの新規感染者数の推移を示す折れ線グラフは、波を打つように増減を繰り返している。一方、ここにきて右肩上がりなのが、死者と重症者の数だ。
8月14日に192人の新規感染者が出た大阪では、5人の死亡が確認され、最多だった5月20日に並び、重症者は最多の11人が報告された。
政府は緊急事態宣言を出した「第1波」のときと比べて「重症者がかなり少ない」と説明しているが、果たして本当にそうなのか。全国で4月上旬に79人だった重症者数は8月17日には243人と、ほぼ3倍。「重症化率」が低いだけで、重症者の数そのものは大幅に増えているのだ。
「発表されている数字や言葉にはさまざまな落とし穴があります。これらをどうとらえるのか。正しい見方をしなければいけません」(ニッセイ基礎研究所主席研究員・篠原拓也さん)
厚労省が発表している「感染者のほとんどが軽症者(無症状者)」は必ずしも症状が軽いという意味ではないと話すのは、国立病院機構三重病院臨床研究部長の谷口清州さんだ。
「新型コロナ感染症に関して、医学的に『軽症』とは、肺炎の症状がなく、呼吸管理・酸素投与の必要がないことをいいます」
つまり、40℃の熱や倦怠感が何日も続いても、人工呼吸器などをつける必要がなく、命に別状がなければ「軽症」にカウントされるということ。厚労省のいう「軽症者(無症状者)」という言葉からは想像もできない。
「そもそも厚労省が重症者の基準を『集中治療室に入室』もしくは『人工呼吸器が必要な患者』に定めたのは5月になってから。緊急事態宣言が出された4月時点では重症者の定義すら曖昧で、政府がいくらそのときと比べて“現在は重症者が減っている”と言っても説得力はまったくありません」(全国紙科学部記者)
しかも、現在でも地域によって定義がバラバラだというから驚く。
「例えば大阪では、人工呼吸器やエクモ(人工肺)をつけているか、集中治療室に入っている人を重症者にカウントしています。一方、東京では集中治療室に入っていても人工呼吸器などをつけていなければ軽症者扱いです。現在、東京よりも大阪の方が重症者数が多いのは、そのあたりの“数字のマジック”が隠れていそうで、信頼できる数値なのか疑問です」(前出・全国紙科学部記者)