日暮里・舎人ライナーの沿線に住む荒川区民は、自転車や徒歩でもJR山手線の駅まで15分程度で移動できる。日暮里・舎人ライナーを使わずとも、通勤・通学に支障をきたすことは少ない。つまり、日暮里・舎人ライナーの朝ラッシュ時間帯における混雑は、ほぼ足立区限定の問題と言っていい。
とはいえ、足立区が区民の生活を守るべく問題解決に尽力するのは当然の責務で、東京都も足立区限定と矮小化せずに向き合わなければならない。そうした事情もあって、東京都交通局は輸送力を増強する目的で新型車両の導入を6月に発表した。
「これまでにも、日暮里・舎人ライナーには何回かにわたって新型車両が導入してきました。開業時から活躍した300形と呼ばれる旧型車両は、座席配置の関係から乗車定員は245名でした。それ以降に導入された車両は、座席配置を変えて乗車定員を262名へと増やしています。今回発表された新型車両がいつから導入されるのかはっきりと決まっていませんが、新型車両が増えることで輸送力は確実に増えます。それは、少なからず混雑の緩和に寄与するでしょう」(東京都交通局車両電気部車両課)
しかし、新型車両と旧型車両の定員数は一便あたり17名しか差がない。輸送力が増えるとはいえ、それだけで混雑を一気に解消できるとは考えにくい。ほかに、金銭的負担の少なくて済む対策はないのだろうか?
「日暮里・舎人ライナーとほぼ同じ区間には、都営バスの”里48″が走っています。足立区では、都営バス”里48″を使うように呼びかけて少しでも利用者の分散を図っています。しかし、バスは時間通りに着きません。鉄道と比べると、通勤・通学には不向きです。そうしたこともあり、『日暮里・舎人ライナーから都営バスへ』の振り替えは思うように進んでいません。そうした実情を踏まえて、足立区は日暮里・舎人ライナーと都営バスのどちらも利用できる共通定期券を東京都交通局に要望しています。すぐ実現することは難しいかもしれませんが、これが実現すれば日暮里・舎人ライナーの混雑は大きく改善すると考えています」(足立区都市建設部交通対策課)
ラッシュ時は混雑しているのに、赤字路線という相反する課題を抱える日暮里・舎人ライナー。これは、「採算の取れない地域の足を、どうやって守るのか?」といった問題にもつながる。人口減少・過疎化が止まらない日本において、今後はこうした鉄道路線が各地で続出するだろう。日暮里・舎人ライナーの件は、そうした路線の先行事例になるのかもしれない。
東京都と足立区は、この難局にどう立ち向かうのか?